ファッツ・ウォーラーの1942年の録音を聴いていこう。ボックスの解説によれば、この年ウォーラーは8曲の吹込みを行っている。前年が36曲だったので激減している。
その理由は、1941年12月8日日本がハワイの真珠湾を攻撃して以来、アメリカは日本、ヨーロッパと二方面での戦争を戦わざるを得なくなっていたことが挙げられる。この年は戦時下であり、そのことはジャズにもいろいろな影響を及ぼしていた。まずSP盤レコードの原料であった「シェラック」が不足となり、レコード会社はやむなく操業を短縮せざるを得なくなっていたのである。加えてガソリンが配給制となるのです。バンドの移動に不可欠なガソリンが入手するのが難しくなり、汽車においても座席確保が出来なくなっていた。そしてアメリカでも行われた徴兵制により、バンド・マンが次々と兵隊にとられていくようになり、バンド・マン不足の状態になっていくのです。
さらにAFM(アメリカ音楽家連合会)が吹込みには印税を収めるようレコード会社に要求し対立、この結果1942年8月1日から44年11月30日までレコードの吹込みが停止するという事態に陥った。つまりファッツのレコーディングは、7月30日を最後に行われなくなるのである。
ウォーラーは、7月30日一歌手として"That's what the well-dressed man in Harlem will wear"という曲を吹き込んだ後、映画「ストーミー・ウェザー」(右はそのポスター)の音楽を作り、また映画に出演するために、ハリウッドに向かう。そしてその翌1943年には、初の黒人ブロードウェイ・ミュージカル作曲者として、「アーリー・トゥ・ベッド」の作曲を担当するのである。
そして1943年ストーミー・ウェザーの大成功を受けて、カリフォルニア州サンタモニカのザンジバル・ルームで公演を行った。この公演も大成功の裡に終わったが、その公演中から体調を崩していた。肺炎であった。公演終了後、ロサンゼルスからニューヨーク市に戻る途中、1943年12月15日ロサンゼルスとシカゴを結ぶ長距離列車「スーパーチーフ」号がミズーリ州カンサス・シティに差し掛かった時にこの世を去ってしまうのである。満39歳だった。
| Band leader , Organ | … | ファッツ・ウォーラー | Fats Waller | |||||||||
| Trumpet | … | バグス・ハミルトン | Bugs Hamilton | 、 | ジョー・トーマス | Joe Thomas | 、 | コートニー・ウィリアムズ | Courtney Williams | |||
| Trombone | … | ジョージ・ウィルソン | George Wilson | 、 | ハーブ・フレミング | Herb Flemming | ||||||
| Sax | … | ジーン・セドリック | Gene Sedric | 、 | ロバート・キャロル | Robert Carroll | 、 | ロウレンス・フィールズ | Lawrence Fields | 、 | ジョージ・ジェイムズ | George James |
| Guitar | … | アル・ケイシー | Al Casey | |||||||||
| Bass | … | セドリック・ウォーレス | Cedric Wallace | |||||||||
| Drums | … | アート・トラッピアー | Art Trappier |
現代のジャズ・メンにもよく演奏されるウォーラーの大傑作。ジャズ関連のレコードなどでは「ジターバッグ」と表記されるが、昔の日本人には「ジルバ」と聞こえたらしい。多分その方が英米人の話す英語には近いのだろう。
全篇ウォーラーの弾くオルガン・ソロで貫かれている。オーケストラも入っているが、完全にウォーラーの伴奏に廻っている。ヴォーカルは無し。
| Band leader , Piano & Vocal | … | ファッツ・ウォーラー | Fats Waller |
| Trumpet | … | バグス・ハミルトン | Bugs Hamilton |
| Sax | … | ジーン・セドリック | Gene Sedric |
| Guitar | … | アル・ケイシー | Al Casey |
| Bass | … | セドリック・ウォーレス | Cedric Wallace |
| Drums | … | アート・トラッピアー | Art Trappier |
| Chorus | … | ディープ・リヴァー・ボーイズ | Deep River Boys |
| Record5B-7. | バイ・ザ・ライト・オブ・ザ・シルヴァリー・ムーン | By the light of the silvery moon |
| Record5B-8. | スイング・アウト・トゥ・ヴィクトリー | Swing out to victory |
当時の流行歌だという。ヴォーカルのバックのコーラスはディープ・リヴァー・ボーイズによる。ヴォーカルの後のTpソロ、Clによるオブリガードなど全篇にいい雰囲気が漂っている。
タイトルの意味は「スイングで勝利を」という意味だそうで、戦時下のこの時戦意高揚のためにこのような録音を行い協力したのだという。確かにどことなくアメリカの軍隊を感じさせるような曲である。
今回が拙HPで、彼を取り上げるのは最後となる。何度も書いて申し訳ないが、レコード・ボックスにはパーソネルや録音データは一切掲載されていないため、パーソネル等データについてはWebその他で調べ得る限りを記載した。
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