ジョン・カービーはスイング時代きっての名ベーシストとして、数多のセッションに起用されているし、拙ホームページでも何度も登場している。しかし彼の組織したセクステットこそは、”The biggest little band in the land”(わが国で最も大きな小バンド 直訳で失礼)と言われ、厳しい評論で知られる故粟村政昭氏も「本当の意味でジャズ史上最初にコンボの名を冠しえたグループ」と非常に評価が高い。これらの意味するところは、コンボ、つまり小編成バンドはベニー・グッドマンのトリオ、カルテット演奏、アーティー・ショウのグラマシー・ファイヴ、トミー・ドーシーのクラムベイク・セヴン、ボブ・クロスビーのボブ・キャッツなどのように、オーケストラを率いながらいわゆる「味変」のようにコンボ演奏を行ったのに対して、ビッグ・バンド全盛の時代に、始めからコンボ演奏を行うためにバンドを組織し、サウンド作りを行ったということであり、その人選の良さも相まって見事に調和の取れたアンサンブルを聴かせてくれた。先ほどの辛口評論家粟村師も、「時に軽やかに時に優雅にスイングして室内楽的ジャズの最高のものを創造するのに成功した」と珍しくべた誉めをしているくらいである。
カービーのバンドは1938年に結成され、吹込みも複数あるようだが1938年の録音は残念ながら
僕の持っているこの年最初の六重奏団の録音は、ミルドレッド・ベイリーの伴奏を務めたものである。
| Vocal | … | ミルドレッド・ベイリー | Mildred Bailey |
| Band leader & Bass | … | ジョン・カービー | John Kirby |
| Trumpet | … | チャーリー・シェイヴァース | Charlie Shavers |
| Clarinet | … | バスター・ベイリー | Buster Bailey |
| Alto sax | … | ラッセル・プロコープ | Russell Procope |
| Piano | … | ビリー・カイル | Billy Kyle |
| Xylophone | … | レッド・ノーヴォ | Red Norvo |
| Drums | … | オニール・スペンサー | O'Nell Spencer |
| Record2 B-4. | セント・ルイス・ブルース | St. Louis blues | 1939年1月18日 |
| Record2 B-5. | テイント・ホワット・ユー・ドゥ | 'Tain’t what you do | 1939年2月28日 |
| Record3 A-5. | ゴースト・オブ・ア・チャンス | A ghost of a chance | 1939年6月27日 |
このバンドはオーケストラという規模を持っていないが、何といっても最初のコンボと言われるバンドで、本来セクステット編成だがミルドレッドの夫君レッド・ノーヴォが加わり7人編成となっている。実に興味深い録音である。
| Bandleader & Bass | … | ジョン・カービー | John Kirby |
| Trumpet | … | チャーリー・シェイヴァース | Charlie Shaversk |
| Clarinet | … | バスター・ベイリー | Buster Bailey |
| Alto sax | … | ラッセル・プロコープ | Russell Procope |
| Piano | … | ビリー・カイル | Billy Kyle |
| Drums | … | オニール・スペンサー | Oneil Spencer |
| A-1. | ノクターン | Nocturne |
| A-2. | ワン・アローン | One alone |
| A-3. | ユモレスク | Humoresque |
| A-4. | セレナーデ | Serenade |
上記評論家の粟村師は僕の最も信頼する評論家だが、カービーの項で次のようにも発言している。「このグループが力を入れていたクラシックのジャズ化にはいささか漫画的な効果しか生まなかった」と。そしてこの1939年10月12日の録音はどうもこの「クラシックのジャズ化」の演奏のようなのである。