ジョン・カービ― 1939年

John kirby 1939

ジョン・カービー・セクステット

ジョン・カービーはスイング時代きっての名ベーシストとして、数多のセッションに起用されているし、拙ホームページでも何度も登場している。しかし彼の組織したセクステットこそは、”The biggest little band in the land”(わが国で最も大きな小バンド 直訳で失礼)と言われ、厳しい評論で知られる故粟村政昭氏も「本当の意味でジャズ史上最初にコンボの名を冠しえたグループ」と非常に評価が高い。これらの意味するところは、コンボ、つまり小編成バンドはベニー・グッドマンのトリオ、カルテット演奏、アーティー・ショウのグラマシー・ファイヴ、トミー・ドーシーのクラムベイク・セヴン、ボブ・クロスビーのボブ・キャッツなどのように、オーケストラを率いながらいわゆる「味変」のようにコンボ演奏を行ったのに対して、ビッグ・バンド全盛の時代に、始めからコンボ演奏を行うためにバンドを組織し、サウンド作りを行ったということであり、その人選の良さも相まって見事に調和の取れたアンサンブルを聴かせてくれた。先ほどの辛口評論家粟村師も、「時に軽やかに時に優雅にスイングして室内楽的ジャズの最高のものを創造するのに成功した」と珍しくべた誉めをしているくらいである。
カービーのバンドは1938年に結成され、吹込みも複数あるようだが1938年の録音は残念ながら「ジョン・カービー 1938年」で取り上げた1曲しか保有していない。今回取り上げる音源の中心は、CBSから出ていたレコード“The John Kirby sextet Vol.2 1939〜1940”(CBS 450183-1)である。タイトルが”Vol.2”となっている。ここから想像するに、”Vol.1”には1938、39年の録音が収録されているのであろう。残念ながらこの”Vol.1”をずーっと探しているのだが、現状購入できていない。これからも探すつもりなので、入手出来たら改めて取り上げたいと思っている。
因みに右はこのコンボの写真で、左からカービー(B)、オニール・スペンサー(Ds)、ラッセル・プロコープ(As)、バスター・ベイリー(Cl)、チャーリー・シェイヴァース(Tp)、ビリー・カイル(P)である。

僕の持っているこの年最初の六重奏団の録音は、ミルドレッド・ベイリーの伴奏を務めたものである。

「ミルドレッド・ベイリー/ハー・グレーテスト・パフォーマンシズ」3枚組レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1939年1月、2月 、6月 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アカンパニード・バイ・ジョン・カービーズ・オーケストラ(Mildred Bailey accompaniedd by John Kirby's orchestra)

Vocalミルドレッド・ベイリーMildred Bailey
Band leader & Bassジョン・カービーJohn Kirby
Trumpetチャーリー・シェイヴァースCharlie Shavers
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Alto saxラッセル・プロコープRussell Procope
Pianoビリー・カイルBilly Kyle
Xylophoneレッド・ノーヴォRed Norvo
Drumsオニール・スペンサーO'Nell Spencer

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performance"(Columbia JC3L-22)

Record2 B-4.セント・ルイス・ブルースSt. Louis blues1939年1月18日
Record2 B-5.テイント・ホワット・ユー・ドゥ'Tain’t what you do1939年2月28日
Record3 A-5.ゴースト・オブ・ア・チャンスA ghost of a chance1939年6月27日
「ミルドレッド・ベイリー/ハー・グレーテスト・パフォーマンシズ」3枚目A面

このバンドはオーケストラという規模を持っていないが、何といっても最初のコンボと言われるバンドで、本来セクステット編成だがミルドレッドの夫君レッド・ノーヴォが加わり7人編成となっている。実に興味深い録音である。

Record2 B-4.「セント・ルイス・ブルース」
W.C.ハンディ作の超有名曲。そもそもミルドレッドがブルースを歌うこと自体が珍しいが、やはり軽妙と言えば軽妙だが、軽いと言えば軽い。ソロは夫君の能坊が取っている。次曲もそうだが、期待のカービーのセクステットもアンサンブルだけで、こういう気鋭のバンドを使う必要があったのかと思うが、たんに曲を聴くだけならよくスイングしているし聴き応えはある。
Record2 B-5.「テイント・ホワット・ユー・ドゥ」
この年ベニー・グッドマンやジミー・ランスフォードなども録音しているので人気があった曲なのだろう。スキャットなども交え軽快にスイングしているが、こういう曲は彼女には合わないなぁという感じがする。
Record3 A-5.「ゴースト・オブ・ア・チャンス」()
この録音では、再びジョン・カービーのセクステット+能坊との録音。しっとりとしたスタンダード・ナンバーで、こういう曲の方がミルドレッドらしくて、出来もいいと思う。

「The John Kirby sextet Vol.2 1939〜1940」レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1939年10月12日 シカゴにて録音

<Personnel> … ジョン・カービー・セクステット(John Kirby Sextet)

 
Bandleader & Bassジョン・カービーJohn Kirby
Trumpetチャーリー・シェイヴァースCharlie Shaversk
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Alto saxラッセル・プロコープRussell Procope
Pianoビリー・カイルBilly Kyle
Drumsオニール・スペンサーOneil Spencer

<Contents> …"The John Kirby sextet Vol.2 1939〜1940"(CBS 450183-1)

A-1.ノクターンNocturne
A-2.ワン・アローンOne alone
A-3.ユモレスクHumoresque
A-4.セレナーデSerenade

上記評論家の粟村師は僕の最も信頼する評論家だが、カービーの項で次のようにも発言している。「このグループが力を入れていたクラシックのジャズ化にはいささか漫画的な効果しか生まなかった」と。そしてこの1939年10月12日の録音はどうもこの「クラシックのジャズ化」の演奏のようなのである。

「The John Kirby sextet Vol.2 1939〜1940」レコードA面
A-1.「ノクターン」
作者は<T.Griselle>とある。クラシックにも疎い僕には、この作者が誰なのか分からない。しかし”Nocturne”と言えば、日本では「小夜曲」と訳されるクラシック方面の曲という感じがする。この曲も元曲はそんな感じなのではないかと思わせる。実にゆったりとしたテンポでシェイヴァースがメロディをリードする。典雅な雰囲気でセクステットというよりは管楽六重奏団という感じだ。カービーもアルコで弾いているようだ。
A-2.「ワン・アローン」
こちらはオスカー・ハマースタイン2世作詞シグムンド・ロンバーグ作曲のポピュラー・ナンバー。軽快にそしてあくまで上品にスイングしている。シェイヴァース、ベイリー、プロコープ、カイルと短いソロが入る。ともかく難しいアンサンブルを一糸乱れずきっちりと合奏するところはさすがである。
A-3.「ユモレスク」
これはクラシック通でなくても知っているドヴォルザーク作の「ユモレスク」。1937年にトミー・ドーシーがレコーディングしている。こちらも軽快なスイング・ナンバー。ソロはベイリー⇒カイル。
A-4.「セレナーデ」
シューベルト作とある。これも軽快なスイングナンバー。ソロはカイルとベイリー。上品なアンサンブルが見事。

このWebサイトについてのご意見、ご感想は、メールでお送りください。

お寄せいただいたご意見等は本文にて取り上げさせていただくことがあります。予めご了承ください。