ライオネル・ハンプトン 1938年

Lionel Hampton 1938

ライオネル・ハンプトンの1938年最初の録音は、ベニー・グッドマンの「カーネギー・ホール・コンサート」へカルテットの一員として出演した時の実況録音である。この時の演奏は録音を前提としたものではないが、非常に歴史的に重要なコンサートの録音が残されていたことは実に幸運であった。
ではなぜこのコンサートが「歴史的」なのか、コンサートの全容などについては「ベニー・グッドマン 1938年」を参照。ともかく伝統と格式のあるニュー・ヨークのカーネギー・ホールでのコンサートへの参加はハンプにとっても非常に名誉なことであったろう。

<Date & Place> … 1938年1月16日 ニューヨーク・カーネギー・ホールにて実況録音

コンサートのプログラムはまずグッドマンのオーケストラが登場し、オープニングに相応しいスインギーなナンバー「その手はないよ」などを演奏し、「ジャズの20年史(Twenty years of Jazz)」コーナーでジャズの歴史に触れ、デューク・エリントン楽団からのメンバーを登場させ、自身のオーケストラを挟んでカウント・ベイシー楽団のメンバーも加えて「ジャム・セッション」を演じて見せた。そしてその後舞台は一変してBG、クルーパ、ウィルソン、ハンプトンという少人数による演奏を組み込むのである。

<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Drumsジーン・クルーパGene Krupa
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton

<Contents> … 「ベニー・グッドマン・ライヴ・アット・カーネギー・ホール-1938(完全版)」(SME RECORDS SRCS 9610〜1)&「ベニー・グッドマン/カーネギー・ホール・ジャズ・コンサート」(CBSソニー SOPB 55007〜08)

CD1-18.&record1.B-3.アヴァロン
実にスインギーな演奏で、ウィルソン、BG、ハンプトンとも素晴らしいソロを披露する。
CD1-19.&record1.B-4.私の彼氏
ガーシュイン兄弟の作になるスタンダード・ナンバー。むせび泣くようなBGのCl、そしてハンプトンのソロと続く。フル・バンドに劣らぬ迫力とは油井氏。
CD1-20.&record2.A-1.アイ・ガット・リズム
エリントン・ナンバーでアップ・テンポでスインギーな演奏を展開する。BGの張り切ったソロ、そしてハンプトン、BGとハンプトンの絡み、ブレイクの面白さと聴きどころ満載の演奏である。

そしてここで第1部は終了する。休憩して第2部に移る。

第2部もオーケストラの演奏から始まる。1部と異なるところはここで初めて専属歌手のマーサ・ティルトンが登場するところであろう。ティルトンを含めたオーケストラ演奏が一しきり続き、1部に続いてスモール・グループの登場となる。
CD2-9.&record2.A-7.チャイナ・ボーイ
シカゴ時代からBGが好んで演奏したナンバー。BGのバックで「もう1コーラスやれ」(Take one more , Benny)と声をかけるのはクルーパで、クルーパのバックで同じように呼びかけるのはBGだという。三者一体となった素晴らしい演奏で、特にクルーパのドラミングは素晴らしい。
CD2-10.&record2.B-1.サヴォイでストンプ
エドガー・サンプソンがチック・ウェッブ楽団のために書いた曲。ここからハンプトンが加わりカルテット演奏となる。
CD2-12.&record2.B-2.ディジー・スペルズ
BG、ウィルソン、ハンプトンの共作という。興が乗ればソロをいくらでも長くできるジャム・セッション向けの曲。各自のソロも通常のレコーディングの倍の長さであるとは油井氏。

コンサートはこの後フィナーレと向かい「シング・シング・シング」の大熱演で大いに盛り上がるのである。

<Date & Place> … 1938年1月18日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader , Vibraphone & Vocalライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Trumpetクーティー・ウィリアムスCootie Williams
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny hodges
Baritone saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Pianoジェス・ステイシーJess Stacy
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassビリー・テイラーBilly Taylor
Drumsソニー・グリアSonny Greer

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第16巻 ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)

record2 A-8.ユーアー・マイ・アイディアルYou're my ideal
record2 B-1.ザ・サン・ウィル・シャイン・トゥナイトThe sun will shine tonight
record2 B-2.リング・デム・ベルズRing dem bells
record2 B-3.その手はないよDon't be that way

1938年最初のセッションは1月18日に行われた。これはかのベニー・グッドマンのカーネギー・ホールでの歴史的なコンサートの翌々日である。メンバーを見るとハンプトン、ステイシー、リュースはBGのバンドメンバーとしてカーネギーに出演しているし、ウィリアムス、ホッジスもエリントニアンだがカーネギーに出演している。カーネギーには出ていないがソニー・グリアもビリー・テイラーもエリントニアンである。ステイシーなどはカーネギーからバド・フリーマンの吹込みに駆け付け、翌日はハンプトンに呼ばれたこのセッションに参加している。

record2 A-8.「ユーアー・マイ・アイディアル」
ファッツ・ウォーラーの作。サンプソンのバリトンによるイントロから、ホッジスとウィリアムス(サビ)のファースト・コーラスが圧巻で、バリトンのブリッジからハンプトンのヴォーカルも良く、オブリガードをつけるホッジス、ステイシーも快調である。ヴォーカルの後リュースのGtをブリッジにして、ハンプトンのVbと合奏となる。ヘッド・アレンジによるジャム・セッション型の演奏だが、まことに素晴らしい。
record2 B-1.「ザ・サン・ウィル・シャイン・トゥナイト」
ミディアム・スロウのナンバーで、ファースト・コーラスはVbで出て、サビをウィリアムスがグロウル・スタイルで盛り上げ、短いピアノを挟んでヴォーカルとなる。歌の後の半コーラスはホッジスとハンプトンが分け合っている。全体として都会的で洒落た感じの仕上がりである。
record2 B-2.「リング・デム・ベルズ」
エリントンの作で自身では1930年に初吹込みを行っている作品。ハンプトンのオール・スター・セッション中屈指の名演。ハンプトンと合奏によるファースト・コーラス、ホッジスの輝かしい半コーラス、ハンプトンのユーモラスなスキャット入りヴォーカル、続いてウィリアムスのグロウル・スタイルの1コーラス、サンプソンの半コーラスを経てハンプトンとウィリアムスが2コーラス半の大熱演を繰り広げる。バックの盛り上げもさすがに素晴らしい。
record2 B-3.「その手はないよ」
この曲はBGとバリトンで参加しているサンプソンの合作。この日2日前カーネギーで大当たりを取ったナンバーであり、BGは2月に入って16日にスタジオ録音を行っている。。BGはこの曲は「当たる」と思って録音したと明かしている。しかしその前カーネギーの2日後にハンプトンが録音している。ただ2日後ということもあるし、既にこの曲はこのオールスター・セッションで録音することは決めていたのではないかと思われる。そして面白いことに2か月以上たった3月23日バンドの同僚であり、セッション・シリーズではライヴァルのテディ・ウィルソンも録音するのである。期せずしてBG、ウィルソン、ハンプトンの競合となった形である。
このことをBGはどう思っただろうか?ただ作ったのはサンプソンでもあるので文句は言えないが面白くないというところだったのではないだろうか?
こちらの演奏は第1コーラスがハンプトンのVbとサンプソンのサビ、第2コーラスはホッジスとウィリアムス(サビ)、そしてハンプが半コーラスとなっている。ここでもホッジスの流麗かつ新鮮なアドリブが大きなハイライトを作っている。ここまでホッジスは3回セッションに参加しており、いずれも名演を残しているが、これ以降何故か参加していない。

カーネギー・ホール・コンサートからしばらくして、ベニー・グッドマンと彼のバンドを力強く支えてきた名ドラマー、ジーン・クルーパの間に軋轢が起こり、クルーパは3月3日に退団する。これは当時大きなニュースになったという。そこでBGはドラムに急遽ライオネル・ハンプトンを起用するのである。ハンプトンはもともとドラマーだっただけに、その穴を過不足なく埋めるのである。この辺りの事情についても詳しくは「ベニー・グッドマン 1938年」を参照。

<Date&Place> … 1938年3月9日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Trumpetハリー・ジェイムスHarry Jamesクリス・グリフィンChris Griffinジギー・エルマンZiggy Elman
Tromboneレッド・バラードRed Ballardヴァ―ノン・ブラウンVernon Brown
Alto saxハイミー・シャーツァーHymie Schertzerデイヴ・マシューズDave Mathews
Tenor saxレスター・ヤングLester Youngベイブ・ラッシンBabe Russin
Pianoジェス・ステイシーJess Stacy
Guitarフレディー・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Vocalマーサ・ティルトンMartha Tilton

移動分
Alto sax … ジョージ・ケーニヒ ⇒ デイヴ・マシューズ(Dave Mathews)
Tenor sax … アート・ロリーニ ⇒ レスター・ヤング(Lester Young)
Guitar … アラン・リューズ ⇒ フレディー・グリーン(Freddie Greene)
Bass … ハリー・グッドマン ⇒ ウォルター・ペイジ(Walter Page)
Drums … ジーン・クルーパ ⇒ ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD8-11.プリーズ・ビー・カインドPlease be kind
CD8-12.ティ・ピ・ティンTi-pi-tin
CD8-13.オー・オー・ブームOooh-oh-boom !
CD8-14.オールウェイズ・アンド・オールウェイズAlways and always
CD8-15.思わせぶりMake believe
CD8-16.ブルー・ルーム(テイク1)The blue room(take1)
CD8-17.ブルー・ルーム(テイク2)The blue room(take2)
CD8-11.プリーズ・ビー・カインド
CDの曲目解説の野口久光氏は、ポップなナンバーであるとしている。マーサ・ティルトンのヴォーカル入り。
CD8-12.ティ・ピ・ティン
メキシコの曲だという。ホットなインスト・ナンバーで、BGとハリー・ジェイムスの間でレスター・ヤングがソロを取っているのが貴重。ハンプトン(Ds)も力演だが、何となく叩き方がクルーパ風である。
CD8-13.オー・オー・ブーム
野口氏によると、マイク・ライリーのノヴェルティ・ソングで、ティルトンとBGがヴォーカルのかけ合いを演じ、後半BGの指名で、ブラウン(Tb)、ラッシン(Ts)、ジェイムス(Tp)が短いソロを取る。
CD8-14.オールウェイズ・アンド・オールウェイズ
当時の映画の主題歌で歌っているのはもちろんティルトン。
CD8-15.思わせぶり
1927年のミュージカルの名作「ショウ・ボート」の中のラヴ・ソング。ヘンダーソンのアレンジでジェイムス(Tp)が大きくフューチャーされる。
CD8-16、17.ブルー・ルーム
ロジャース=ハートの初期のミュージカル「ザ・ガール・フレンド」(1926年)から生まれたヒット曲。これもヘンダーソンのアレンジでBGがソロを取る。

<Date&Place> … 1938年3月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・トリオ&カルテット(Benny Goodman Trio & Quartet)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Drumsディヴ・タフDave Tough

移動分
Drums … ジーン・クルーパ ⇒ ディヴ・タフ(Dave Tough)

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD8-18.スイート・ロレインSweet Lorraine
CD8-19.ザ・ブルース・イン・マイ・ハート(テイク1&2)Blues in my heart(take1&2)
CD8-20.シュガー(テイク1)Sugar(take1)
CD8-21.シュガー(テイク2)Sugar(take2)
CD9-1.ディジー・スペルズDizzy Spells
3月9日のレコーディングの後1週間かそのくらいで、ディブ・タフがドラムの座に就いた。かれはトミー・ドーシーのバンドで長らく働き、バニー・ベリガンのバンドで働いていた。彼のスタイルは、クルーパよりもリラックスしたもので、音楽的な繊細さでは上回ったが、パワフルさ、テクニックではクルーパに及ばなかったと言われる。その辺りを注意しながら聴いてみよう。
CD8-18.スイート・ロレイン
トリオによる演奏。タフの優れたブラシ・ワークが光る。
CD8-19.ザ・ブルース・イン・マイ・ハート(テイク1&2)
ハンプトンのオリジナル。パート1ではBGが全面的にソロを取り、パート2では、ハンプトンの渋いヴォーカルが主役となる。
CD8-20、21.シュガー
テイク1が未発表テイクでややテンポがスロウ。いかにもジャム・セッション風でタフも本領を発揮しているとは野口氏。
CD9-1.ディジー・スペルズ
この曲の初お披露目はカーネギー・ホールでのコンサートだった。BGとハンプトンの即興的な合作リフ曲で、アップ・テンポに乗ってスリリングな演奏が楽しめる。

<Date&Place> … 1938年7月21日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader , Vibraphone & Vocalライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Trumpetハリー・ジェイムスHarry James
Clarinet & Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Alto saxディヴ・マシューズDave Mathews
Tenor saxハーシャル・エヴァンスHerschel Evansベイブ・ラッシンBabe Russin
Pianoビリー・カイルBilly Kyle
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第16巻 ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)

record2 B-4.スイング気分でI'm in the mood for swing
record2 B-5.靴磨きのドラッグShoe shiner's drag
record2 B-6.エニ・タイム・アット・オールAny time at all
record2 B-7.マスクラット・ランブルMuskrat ramble

この日のセッションでは、BGバンドから3人が参加している。看板スター、ハリー・ジェイムス、ディヴ・マシューズ、ベイブ・ラッシンの3人、ベイシー楽団からは初登場ハーシャル。エヴァンスとジョー・ジョーンズ、ジョン・カービーのオニックス・クラブ・ボーイズからは代表のカービーとビリー・カイルそしてもちろん大物ベニー・カーターと今回も豪華な顔ぶれである。

record2 B-4.「スイング気分で」
ベニー・カーターが当時のヒット曲”I'm in the mood for love”に引っ掛けて書き、アレンジしたミディアム・テンポのスインギーなナンバー。ジェイムズとサックス・セクション(サビ)によるオープニング・コーラスに続いて、カーターがフル・コーラスのソロを取り、ホッジスと双璧のプレイを展開する。次にハンプトンのVbとカイル(サビ)のコーラス、そして最後はカーターがアレンジしたスムースなサックス・アンサンブルとハンプトンのソロが分け合う。
record2 B-5.「靴磨きのドラッグ」
ジェリー・ロール・モートンが書いた古いブルース。TpとVbのリードする最初の2コーラスから、カーター(As)、ジェイムズ、エヴァンズ、カーター(Cl)、ハンプトン(Vb)とそれぞれ1コーラスのソロを取る。名手揃いとあってさすがに聴き応えのあるソロが並ぶ。
record2 B-6.「エニ・タイム・アット・オール」
ヴァン・ヒューゼン、ドーシーの合作曲。これもカーターのアレンジが光る。ミディアム・スロウでジェイムズ(Tp)とサックス・セクション(サビ)の第1コーラスからハンプトンのヴォーカルとなり、バックに寄り添うカーターが光る。歌の後全員による半コーラスで締め括っている。
record2 B-7.「マスクラット・ランブル」
名トロンボーン奏者キッド・オリーがルイ・アームストロングのホット・ファイヴのために書いた曲で、ディキシーのスタンダード・ナンバー。アンサンブルによるA、Bテーマの演奏の後、エヴァンズ、カーター(Cl)、ジェイムズ、再びカーター(As)、カイル(P)、ラッシン(Ts)、ハンプトン(Vb)とほとんど全員が16小節づつソロをリレーする。リズム・セクションも良くソロイストをバックしている。野口氏はスタジオ・セッションとは思えない緊密なチーム・ワークが抜群であると述べている。

3月中旬にバニー・ベリガンのバンドから名手、ディブ・タフがドラムの座に就いた。しかしタフも直ぐに辞めてしまう。こうなればまた臨時のドラムにはハンプトンが座るしかない。

<Date&Place> … 1938年8月8、12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)

8月8日 Drums … ディヴ・タフ ⇒ ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)
8月11日 Tenor sax … アート・ロリーニ(Art Rollini) ⇒ Out
以外は7月11日と同じ

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD10-2.ブルー・インターリュードBlue interlude8月8日
CD10-3.ホエン・アイ・ゴー・ア・ドリ−ミンWhen I go a dreamin'8月11日
CD10-2.ブルー・インターリュード
ベニー・カーターの作で、アレンジもカーター。演奏はこれまでと何となく一味違うとは野口氏。確かにこれまでにないようなメランコリックな感じがする。ティルトンのヴォーカル入りで、BGとロリーニ(Ts)のソロが聴くことができる。
CD10-3.ホエン・アイ・ゴー・ア・ドリ−ミン
テナーのロリーニが加わっていないが、グッド氏によれば深い意味はなく、ロリーニがこの日の録音を何故か忘れていたためだという。ティルトンの歌入りで、ペンシルヴァニア大学の学内で上演されたショウのために書かれた曲だという。

<Date&Place> … 1938年9月12、14日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)

以外4月22日と同じ。

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD10-4.スイート・リトル・ヘッドエイクYou're a sweet little headache年9月12日
CD10-5.アイ・ハヴ・アイズI have eyes年9月12日
CD10-6.マージ―Margie年9月14日
CD10-7.ホワット・ハヴ・ユー・ガットWhat have you got that gets me !年9月14日
CD10-8.ロシアの子守歌Russian lullaby年9月14日
CD10-4.スイート・リトル・ヘッドエイク、CD10-5.アイ・ハヴ・アイズ
両曲ともビング・クロスビー主演の映画『パリのハネムーン(Paris honeymoon:1938)』の主題歌で、ティルトンのヴォーカル入り。
CD10-6.マージ―
ジミー・マンディのアレンジ。BGが素晴らしいソロを取る。
CD10-7.ホワット・ハヴ・ユー・ガット
日本未公開の映画”Artist & model abroad”の主題歌で、サンプソンのアレンジで、ティルトンのヴォーカル入り。
ロシアの子守歌
アーヴィング・バーリン作の古い曲で、ヴォーカル無しのインスト・ナンバー。

次の録音は約1か月後シカゴで行われた。9月12日はカルテット演奏(1曲はトリオ演奏)で、翌13日はビッグ・バンドによるものである。

<Date&Place> … 1938年10月11日 シカゴにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader , Vibraphone , Piano & Vocalライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Trumpetウォルター・フラーWalter Fuller
Clarinet & Alto saxオマー・シメオンOmer Simeon
Alto saxジョージ・オールダムGeorge Oldham/td>
Tenor saxバッド・ジョンソンBudd Johnsonロバート・クラウダ―Robert Crowder
Pianoスペンサー・オダンSpencer Odun
Bassジェシー・シンプキンスJesse Simpkins
Drumsアルヴィン・バロウズAlvin Burroughs

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第16巻 ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)

record3 A-1.ダウン・ホーム・ジャンプDown home jump
record3 A-2.ロック・ヒル・スペシャルRock hill special
record3 A-3.フィドル・ディドルFiddle diddle

初のシカゴ録音。シカゴと言えばアール・ハインズがいてグランド・テラスを根城にしている。ということで当時のハインズの楽団からの参加者が多い。因みにピアノのオダン、ベースのシンプキンス以外はハインズ楽団である。シカゴというせいかこれまでとは一味違うノリのような気がする。

record3 A-1.「ダウン・ホーム・ジャンプ」
ジャンプ・ナンバーでシメオン(Cl)、フラー(Tp)、ジョンソン(Ts)、ハンプトン(Vb)が1コーラスずつソロを取り、リフ・アンサンブルにかえしている。
record3 A-2.「ロック・ヒル・スペシャル」
ハンプトンのオリジナル。ハンプトンは例の2本指奏法のピアノで出て、フラー(Tp)、ハンプトン(P)、ジョンソン(Ts)、ハンプトン(Vb)とソロの競演が続く。アンサンブルもよくスイングしている。
record3 A-3.「フィドル・ディドル」
ハンプトンとBGの合作したリラックス・ムードの曲。シメオン(Cl)、オダン(P)を経て、とぼけた味のハンプトンのヴォーカル、フラーのミュート・プレイ、Vbとアンサンブルとなる。

<Date&Place> … 1938年10月12、13日 シカゴにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman Quartet and his orchestra)

10月12日 … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)
Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Drumsディヴ・タフDave Tough
10月13日 … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ
4月22日と同じ。

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD10-9.オーパス 1/2Opus 1/210月12日
CD10-10.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マンI must have that man10月12日
CD10-11.スイート・ジョージア・ブラウンSweet Georgia brown10月12日
CD10-12.スワンダフル(テイク1)S'wonderful(take1)10月12日
CD10-13.スワンダフル(テイク2)S'wonderful(take2)10月12日
CD10-14.ユア・ラヴリー・マダムYou're lovely madame10月13日
CD10-15.アイ・ハド・トゥ・ドゥ・イットI had to do it10月13日
CD10-16.ザ・ウェイ・トゥ・トリート・ア・スイートハートIs that the way to treat a sweetheart10月13日
CD10-17.バンブル・ビー・ストンプBumble bee stomp10月13日
CD10-18.チリビリビンCiribiribin10月13日
CD10-19.ジス・キャント・ビー・ラヴThis can't be love10月13日
CD10-9.オーパス 1/2
カルテット演奏で、メンバー4人の共作ということになっている。タフのドラミングが洒落ていて光っている。
CD10-10.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン
トリオ演奏。『1938年のブラックバーズ』でアデレイド・ホールが歌ったナンバー。デューク・エリントンとアデレイドのナンバーを拙HPでも取り上げたことがある。。ウィルソンがいい味を出している。
CD10-11.スイート・ジョージア・ブラウン
今でも歌われたり演奏されたりするスタンダード・ナンバー。
CD10-12、13.スワンダフル(テイク1&2)
テイク2が未発表ナンバー。ガーシュイン兄弟作のスタンダード・ナンバー。
CD10-14.ユア・ラヴリー・マダム
ビッグ・バンド演奏。この曲はCD10-7.「ホワット・ハヴ・ユー・ガット」と同じ映画の主題歌。ティルトンのヴォーカル入り。アンサンブルが実に柔らかい。
CD10-15.アイ・ハド・トゥ・ドゥ・イット
ファッツ・ウォーラー作ヘンダーソンのアレンジ。ティルトンのヴォーカルもスインギーで快調である。
CD10-16.ザ・ウェイ・トゥ・トリート・ア・スイートハート
当時のポピュラー・ソング。ティルトンのヴォーカルを入れダンス・ナンバーに仕立てているとは野口氏。
CD10-17.バンブル・ビー・ストンプ
ヘンダーソンの作・編曲で、野口氏はこの時期のベストの1曲としている。何といっても独特のクセのあるフリーマンのソロが印象的という。
CD10-18.チリビリビン
イタリア民謡でヘンダーソンのアレンジでさすがにうまいとは野口氏。ソロはBG⇒フリーマン(Ts)⇒ジェイムス(Tp)。ジェイムスは翌年独立するが、この曲を自分のバンドのテーマ曲とした。
CD10-19.「ジス・キャント・ビー・ラヴ
ロジャース=ハートの新作ミュージカル『シラキュースから来た若者たち』の主題歌で、ジミー・マンディのアレンジ。ティルトンのヴォーカル入り。

1938年この時期になってもバンド・メンバーとBGとの不和は多かったとグッド氏は記す。バンドは10月26日ニューヨークのウォルドフ・アストリア・ホテルに出演したが、ついにデイヴ・タフは姿を見せなかった。そして彼は解雇された。

<Date&Place> … 1938年11月10日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)

Drums … ディヴ・タフ ⇒ ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)
タフが退団したため、ハンプトンが再びドラムに復帰した。以外は4月22日と同じ

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD10-20.シング・フォー・ユア・サパーSing for your supper
CD10-21.トプシーTopsy
CD11-1.スモーク・ハウス(テイク1)Smoke house(take1)
CD11-2.スモーク・ハウス(テイク2)Smoke house(take2)
CD10-20.シング・フォー・ユア・サパー
新作ミュージカル『シラキュースから来た若者たち』の主題歌で、アレンジも同じくマンディ。ティルトンのヴォーカル入り。
CD10-21.トプシー
ベイシー楽団のギタリスト兼トロンボニスト、エディー・ダーハムの作で、ベイシーは既に吹き込み済の曲。やはり何となくベイシーのカラーが出ているという。ソロはステイシー(P)、ジェイムス(Tp)、フリーマン(Ts)そしてBG、皆快調である。
CD11-1、2.スモーク・ハウス(テイク1&2)
テイク2が未発表テイク。BGとクロード・ホプキンス楽団のTb兼アレンジャーだったフレッド・ノーマンの作。ノーマンは、バニー・ベリガンやトミー・ドーシー、アーティー・ショウなどにアレンジを提供した才人だという。曲はホットなミディアム・アップ・テンポで、実にノリのいい快調なナンバー。

<Date&Place> … 1938年11月12日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … エディ・コンドンと彼のウィンディ・シティ・セヴン(Eddie Condon and his Windy City Seven)

Bandleader&Guitarエディ・コンドンEddie Condon
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Tromboneヴァ―ノン・ブラウンVernon Brown
Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Tenor saxバド・フリーマンBud Freeman
Pianoジョー・ブシュキンJoe Bushkin
Bassアーティー・シャピロArtie Shapiro
Drumsライオネル・ハンプトンLionel Hampton

バンド名は正確には分からないが、前作同様コモドアへの吹込みなので同じバンド名ではないかと思う。
ハンプトンの参加が意外である。

<Contents> … "Eddie Condon/That's a serious thing"(History 20.3008-HI)

CD1-6.サンディSunday
CD2-5.カリフォルニア・ヒア・アイ・カムCalifornia here I come

ハンプトンの参加が意外である。ヴィクターにおける「オールスター・セッション」が始まってからは、恩義のあるベニー・グッドマンのセッションにしかサイドマンとしての参加は極めて稀ではないかと思う。

CD1-6.「サンディ」
フリーマンの短いイントロの後ニュー・オリンズ風の合奏となる。こういう録音にハンプトンが加わるというのがとにかく意外。ソロはラッセル(Cl)⇒ブラウン(Tb)⇒ブシュキン(P)⇒フリーマン(Ts)⇒ハケット(Cor)と短いソロが続き合奏となって終わる。ハンプトンらしいプレイは全く見受けられない。
CD2-12.「カリフォルニア・ヒア・アイ・カム」
ピアノのイントロで始まるところはスイング・ナンバーのようだが、合奏は完全なニュー・オリンズ風である。ソロはラッセル(Cl)、続いてハケットのソロにラッセルが絡むところもニュー・オリンズ風である。ハンプトンの存在感がない。

<Date&Place> … 1938年12月29日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・クインテット(Benny Goodman Quintet)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsバディ・シャッツBuddy Schutz

1938年最後の録音は年も押し詰まった12月29日にクインテットとカルテットによって行われた。このクインテットで注目なのはこれまで加わっていなかったベースが加わっていることである。そしてその奏者としてはジョン・カービーが起用されている。

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD11-19.ピック・ア・リブ(パート1&2)Pick-a-rib(Part1&2)
CD11-20.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク1)I cried for you(take1
CD11-21.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク2)I cried for you(take2)
CD12-1.あなたはご存知ね(テイク1)I know that you know(take1)
CD12-2.あなたはご存知ね(テイク2)I know that you know(take2)
CD11-19.ピック・ア・リブ(パート1&2)
油井正一氏もその著『ジャズの歴史』のベニー・グッドマンの項で取り上げているので紹介しておこう。
曰く、
「彼のスタイルの第二期(1935〜1939年頃)の末期で、一度だけスタイルが目立って変わったことがあった。それは1938年12月に、『ピカリブ(Pick-a-rib)』を吹き込んだ前後で、メロディはいつもと違って著しく簡潔となり、音色は渋くなり、したがってフレイジングはギスギスして、ちょうどメズ・メズロウのスタイルそのままになった。
というのは、この年11月にフランス随一のジャズ批評家、ユーグ・パナシェが初めて渡米して、メズ・メズロウを、当代随一のクラリネット奏者であると激賞した。パナシェは、メズロウを使って、ビクターに数曲吹き込んだが、おそらくBGは、パナシェの批評に、大いに心を動かされて、”なるほど批評家としては、ああいうのをジャズ・クラリネットの最高というのか、それでは僕もスタイルを変えてやってみよう”と、メズロウ流に吹いたに違いないのだ。「ピカリブ」、「君に泣く(I cried for you)」には、この精神的動揺が明らかに現れて、目立った変化を見せている。このレコードは、ジョン・カービーの素晴らしいリズムと共に、グッドマン・コンボの傑作の一つである」と。
因みに野口氏は、この録音でのスタイルの変化等には特に言及していない。
SP盤2面に渡る演奏で、曲はBG自身がミュージカル「スインギン・ザ・ドリーム」のために書いたナンバーで、短いリフを基にしたもの。前半パート1は、BGのソロが中心で、パート2はブギーのリズムとなる。さらに野口氏は、録音に難点があり、カービーのベースは十分効果を上げていないと書いている。確かにほとんど聴こえないのが残念だ。演奏自体をメズロウ云々の情報を脇において聴いても、実に洒脱・モダンな演奏で素晴らしいと思う。
CD11-20、21.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク1&2)
1920年代のポピュラー・ヒット曲で、テイク1がSP盤で発売されていたテイク。テイク2はLP時代に入って初めてレコード化された。
CD12-1、2.あなたはご存知ね(テイク1&2)
この曲だけ何故かカルテット(Dsのシャッツが抜けハンプトンに代わる)で演奏される。これも20年代のミュージカル・ナンバー。ハンプトンの名ドラマーぶりを発揮していて、カービーのずっしりとしたベース・ソロも聴き処となっている。

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