テディ・ウィルソン 1938年

Teddy Wilson 1938

この年もテディ・ウィルソンは、自身のブランズウィック・セッションやベニー・グッドマンのトリオやカルテットなどかなり録音数が多い。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1938年1月6日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332〜50333)

Record1 B-5.一目惚れMy first impression of you
Record1 B-6.君微笑めばWhen you're smiling
Record1 B-7.&Record2 B-2.君微笑めばWhen you're smiling
Record1 B-8.貴方が私を好きだなんてI can't believe that you're in love with me
Record1 B-9.貴方が私を好きだなんてI can't believe that you're in love with me
Record1 B-10.夢がかなえばIf dreams come true

1938年の最初のセッションはピアニストのベイシーを除いたベイシー楽団の精鋭メンバーが顔をそろえることになった。このセッションについて、解説の大和明氏は、「テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションの白眉となった演奏の一つ」と非常に高く評価している。

Record1 B-5.「一目惚れ」
いわゆる30年代の小唄の一つだが、ビリーの一途で可憐な歌唱とレスターのリラックスした歌心溢れるソロによって名演となった。イントロとヴォーカル・バックのオブリガードはクレイトン。ヴォーカルの後のウィルソンのピアノ・ソロも秀逸。全てが一級品である。 村上春樹著「ポートレイト・イン・ジャズ」
Record1 B-6、7.「君微笑めば」
以前から名唱の誉れ高いもので、2ヴァージョン収められている。そしてこのうちのB-7の方が「ザ・テディ・ウィルソン」にも収められているカブルナンバーである。解説に拠れば、B-6がテイク3で、B-7がテイク4のようで、元々両ヴァージョンともSP盤では発売された。しかしLPになって収録されてきたのは、テイク3だという。テイク4がLPに収録されたのは、「ザ・テディ・ウィルソン」が初めてだという。ということは、「ビリー・ホリディ物語」は「ザ・テディ・ウィルソン」の後に出たことになる。確かに僕の記憶でも、「ザ・テディ・ウィルソン」が先に出た記憶がある。
ビリーはいつものように原メロディーから高い音域から歌い始め、まるで無頓着と思われるほどフレイズを引き延ばすようにして歌う平坦な唱法で、伴奏との間に対照的な効果を上げる。何といっても見事なのは、テディの楽し気にスイングするソロ、そしてレスターのソロは30年代屈指のソロで、原メロディーにとらわれないモダンな感覚だが、原曲の雰囲気も忘れないまことに立派なもの。モダン・エイジに入ってからも、リー・コニッツやルビー・ブラフなどにそのまま引用されるなど、多くのプレイヤーの手本となった。またこれらの名唱、名演を支えるリズム隊も素晴らしいとしか言いようがない。
因みに村上春樹氏は、その著『ポートレイト・イン・ジャズ』のビリー・ホリディの項で次のように述べている。「ビリー・ホリディの優れたレコードの中で、敢えて1曲を選ぶとすれば、迷わずに「君微笑めば」を僕は選ぶ」と。彼女が”When you are smiling , the whole world smiles with you”と歌うと、世界は本当に微笑むのだと書いている。
Record1 B-8、9.「貴方が私を好きだなんて」
本来恋が成就した歌として歌われ、明るくハッピーに、アップ・テンポで歌われるのが常だったという。大和氏は、それをビリーは思い切ってテンポを落とし、恋の成就をまるで信じられぬような、さらにはこの幸せが本当のものだろうかという不安や恐れまでも表現しようとしているとし、若干22歳の若い女性の歌とは信じられぬほど、愛の機微を知り尽くしたような表現であると述べている。
クレイトン、モートン、レスターと繋がるソロは正に黄金のリレーである。ヴォーカル・バックのウィルソンもリリカルで彼の本領を発揮したものだ。
Record1 B-10.「夢がかなえば」
大橋巨泉氏は全体的にコーニー(古臭い)な感じだと述べ、ビリーも白タマが多い歌で、まだ持て余している感じだとは巨泉氏。

「ビリー・ホリディ」レコード第3集」2枚目A面

<Date & Place> … 1938年1月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)

Record2 A-1.これがスイングNow they call it swing
Record2 A-2.センチになってOn the sentimental side
Record2 A-3.センチになってOn the sentimental side
Record2 A-4.灯台もと暗しBack in your own back yard
Record2 A-5.女が男を愛する時When a woman loves a man

前録音から6日後の録音で、メンバーも全く同じ。しかしこちらはビリー名義になっている。解説に拠ればこれがビリーがベイシー楽団専属歌手としての最後の録音であるとのことで、この翌月ベイシー楽団を退団する。
前回セッションが抜群の出来だっただけに、このセッションは悪くはないがやや平凡に感じるとも解説の大和氏は言う。

Record2 A-1.「これがスイング」
歌詞の内容に合わせてテディはやや古臭いタッチでイントロを弾き、ビリーの歌が始まるとスイング風に弾いている。芸が細かい。歌詞を大事にして生涯スキャットを歌わなかったビリーだが、サビの部分にスキャットの歌詞がある。歌詞とはいえビリーのスキャットが聴ける珍しい作品。
Record2 A-2、3.「センチになって」
僕はこの邦題は辞めた方がいいと思う。普通「センチになって」と言えば、トミー・ドーシーの大ヒット曲で、同楽団のテーマ曲である"I'm getting sentimental over you"のことであるからである。
同じ曲の別テイクだが、イントロ部をA-2はギター、A-3はピアノで弾いており、この時代にしては別の試みするのは珍しい。さらに珍しいのはほぼ単音の音が聴こえないフレディー・グリーンがメロディーを弾いていることである。さらにはビリーのバックでオブリガードも弾いている。モートンはいつもと変わらずほぼテーマを吹く。このモートンに関して巨泉氏は「能がない」と厳しいが、これがこの人の持ち味で美しいトーンで、トロンボーンの特徴を生かした茫洋としたプレイは味があっていいと僕は思う。そしてオブリガードにテディのリリカルなピアノが付けば、なごみの極致とさえ思える。
Record2 A-4.「灯台もと暗し」
まずイントロのクレイトンの素晴らしい。その好調さはビリーの歌のオブリガードでも続く。そして続くレスターのリラックスしたソロも素晴らしい。
Record2 A-5.「女が男を愛する時」
レスターのイントロから淡々と語りかけるように歌い出すビリーは既に完成の域に達しているとは、巨泉氏。中間のクレイトン節も心地よい。

ベニー・グッドマンの「カーネギー・ホール・コンサート」への出演

この年1938年1月16日伝統あるニュー・ヨークのカーネギー・ホールで、ベニー・グッドマンによる歴史的なコンサートが開催される。なぜ「歴史的」なのか、コンサートの全容などについては「ベニー・グッドマン 1938年」を参照。このコンサートにスモール・グループ要員としてカーネギー・ホールのステージに立つのである。

<Date & Place> … 1938年1月16日 ニューヨーク・カーネギー・ホールにて実況録音

コンサートのプログラムはまずグッドマンのオーケストラが登場し、オープニングに相応しいスインギーなナンバー「その手はないよ」などを演奏し、「ジャズの20年史(Twenty years of Jazz)」コーナーでジャズの歴史に触れ、デューク・エリントン楽団からのメンバーを登場させ、自身のオーケストラを挟んでカウント・ベイシー楽団のメンバーも加えて「ジャム・セッション」を演じて見せた。そしてその後舞台は一変してBG、クルーパ、ウィルソンという少人数によるトリオ演奏を組み込むのである。

<Contents> … 「ベニー・グッドマン・ライヴ・アット・カーネギー・ホール-1938(完全版)」(SME RECORDS SRCS 9610〜1)&「ベニー・グッドマン/カーネギー・ホール・ジャズ・コンサート」(CBSソニー SOPB 55007〜08)

<Personnel> … ベニー・グッドマン・トリオ(Benny Goodman Trio)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Drumsジーン・クルーパGene Krupa
CD1-16.&record1.B-2.ボディ・アンド・ソウル

この曲はトリオの第1回吹き込みでも演奏された。ジャム・セッションでノリまくるのもいいけれどこういうしっとりとしたナンバーもいいでしょ?ジャズにはこういう曲もあるんですよというアピールであろう。

続いてライオネル・ハンプトンが登場し、カルテット編成となる。
上記トリオ+Vibraphone … ライオネル・ハンプトン(Lionel Hampton)

CD1-18.&record1.B-3.アヴァロン
ここからハンプトンも加わりカルテットとなる。実にスインギーな演奏で、ウィルソン、BG、ハンプトンとも素晴らしいソロを披露する。
CD1-19.&record1.B-4.私の彼氏
ガーシュイン兄弟の作になるスタンダード・ナンバー。むせび泣くようなBGのCl、そしてハンプトンのソロと続く。フル・バンドに劣らぬ迫力とは油井氏。
CD1-20.&record2.A-1.アイ・ガット・リズム
エリントン・ナンバーでアップ・テンポでスインギーな演奏を展開する。BGの張り切ったソロ、そしてハンプトン、BGとハンプトンの絡み、ブレイクの面白さと聴きどころ満載の演奏である。

そしてここで第1部は終了する。休憩して第2部に移る。

第2部もオーケストラの演奏から始まる。1部と異なるところはここで初めて専属歌手のマーサ・ティルトンが登場するところであろう。ティルトンを含めたオーケストラ演奏が一しきり続き、1部に続いてスモール・グループの登場となる。
CD2-9.&record2.A-7.チャイナ・ボーイ
シカゴ時代からBGが好んで演奏したナンバー。BGのバックで「もう1コーラスやれ」(Take one more , Benny)と声をかけるのはクルーパで、クルーパのバックで同じように呼びかけるのはBGだという。三者一体となった素晴らしい演奏で、特にクルーパのドラミングは素晴らしい。
CD2-10.&record2.B-1.サヴォイでストンプ
エドガー・サンプソンがチック・ウェッブ楽団のために書いた曲。ここからハンプトンが加わりカルテット演奏となる。
CD2-12.&record2.B-2.ディジー・スペルズ
BG、ウィルソン、ハンプトンの共作という。興が乗ればソロをいくらでも長くできるジャム・セッション向けの曲。各自のソロも通常のレコーディングの倍の長さであるとは油井氏。

コンサートはこの後フィナーレと向かい「シング・シング・シング」の大熱演で大いに盛り上がるのである。

「ザ・テディ・ウィルソン」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1938年3月23日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Clarinetピー・ウィー・ラッセルPee Wee Russell
Alto saxウィリー・スミスWillie Smith
Tenor saxジーン・セドリックGene Sedric
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassアル・ホールAl hall
Drumsジョニー・ブロワーズJohnny Blowers

<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332〜50333)

Record2 B-6.その手はないよDon't be that way
これは意外なレコードである。元々はエドガー・サンプソンがチック・ウェッブ楽団のために作った曲だが、ベニー・グッドマンがカーネギー・ホール・コンサートで取り上げ、演奏し大受けを取った。BGは大ヒットとなる予感がしたとして、急遽翌月の2月16にオーケストラで録音し、予想通り大ヒットとなった。その向こうを張るようにテディ・ウィルソンが録音するのである。僕がBGの顔色をうかがう必要はないけど、BGはどう思っただろうか?どうせヒットするのは自分の方だという自信はあったろう。
それはともかく演奏自体は、BGとはかなり異なる。顔ぶれが違うとこうも演奏が変わってくるのだなぁと思う。

<Date & Place> … 1938年3月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・トリオ&カルテット(Benny Goodman Trio & Quartet)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Drumsディヴ・タフDave Tough

移動分
Drums … ジーン・クルーパ ⇒ ディヴ・タフ(Dave Tough)

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD8-18.スイート・ロレインSweet Lorraine
CD8-19.ザ・ブルース・イン・マイ・ハート(テイク1&2)Blues in my heart(take1&2)
CD8-20.シュガー(テイク1)Sugar(take1)
CD8-21.シュガー(テイク2)Sugar(take2)
CD9-1.ディジー・スペルズDizzy Spells
3月9日のレコーディングの後1週間かそのくらいで、ディブ・タフがドラムの座に就いた。かれはトミー・ドーシーのバンドで長らく働き、バニー・ベリガンのバンドで働いていた。彼のスタイルは、クルーパよりもリラックスしたもので、音楽的な繊細さでは上回ったが、パワフルさ、テクニックではクルーパに及ばなかったと言われる。その辺りを注意しながら聴いてみよう。
CD8-18.スイート・ロレイン
トリオによる演奏。タフの優れたブラシ・ワークが光る。
CD8-19.ザ・ブルース・イン・マイ・ハート(テイク1&2)
ハンプトンのオリジナル。パート1ではBGが全面的にソロを取り、パート2では、ハンプトンの渋いヴォーカルが主役となる。
CD8-20、21.シュガー
テイク1が未発表テイクでややテンポがスロウ。いかにもジャム・セッション風でタフも本領を発揮しているとは野口氏。
CD9-1.ディジー・スペルズ
この曲の初お披露目はカーネギー・ホールでのコンサートだった。BGとハンプトンの即興的な合作リフ曲で、アップ・テンポに乗ってスリリングな演奏が楽しめる。

「ザ・テディ・ウィルソン」2枚目B面

<Date & Place> … 1938年4月29日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Clarinet不明Unknown
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Guitar不明Unknown
Vocalナン・ウィンNan Wynn

<Contents> … 「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332〜50333)

Record2 B-7.もし私が貴方ならIf I were you
Record2 B-8.ジャングル・ラヴJungle love

ここで注目されるのは、ハル・ケンプ楽団やエミリー・ドイッチ楽団というジャズとは無縁のバンドにいた、ジャズ歌手とは言えないナン・ウィンを起用していることである。解説の大和氏によれば、この日ばかりではなく、3月23日、7月29日と3回に渡って起用しているという。彼女の起用の決定は、テディが決めたことかレコード会社側が決めたことかは分からないが。ただ彼女の美貌を見れば一緒にお仕事をしたくなるのもうなづける。

Record2 B-7.「もし私が貴方なら」
第1コーラスでリリースに出るハケットのソロを挟んだホッジスのアルトが実によい。続くウィンの歌も、ミルドレッド・ベイリーを少し軽くしたようでなかなかうまいとは大和氏。なかなかうまいどころかとてもいいと僕は思う。この曲は2週間後にビリーも吹き込んでいるが、リリースの部分などビリーを凌駕するような出来映えであると大和氏は書く。聴き比べてみると面白い。
Record2 B-8.「ジャングル・ラヴ」
ドラムによるイントロからさわやかなハケットのソロが奏される。そしてメロディを豊かに歌わせるホッジス、さらに続くテディも実に好調である。ナン・ウィンのヴォーカルがないのが残念である。

次の録音は約1か月後シカゴで行われた。10月12日はカルテット演奏(1曲はトリオ演奏)で、翌13日はビッグ・バンドによるものである。

<Date&Place> … 1938年10月12、13日 シカゴにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・カルテット・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman Quartet and his orchestra)

10月12日 … ベニー・グッドマン・カルテット(Benny Goodman Quartet)
Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Drumsディヴ・タフDave Tough
10月13日 … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ
4月22日と同じ。

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD10-9.オーパス 1/2Opus 1/210月12日
CD10-10.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マンI must have that man10月12日
CD10-11.スイート・ジョージア・ブラウンSweet Georgia brown10月12日
CD10-12.スワンダフル(テイク1)S'wonderful(take1)10月12日
CD10-13.スワンダフル(テイク2)S'wonderful(take2)10月12日
CD10-9.オーパス 1/2
カルテット演奏で、メンバー4人の共作ということになっている。タフのドラミングが洒落ていて光っている。
CD10-10.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン
トリオ演奏。『1938年のブラックバーズ』でアデレイド・ホールが歌ったナンバー。デューク・エリントンとアデレイドのナンバーを拙HPでも取り上げたことがある。。ウィルソンがいい味を出している。
CD10-11.スイート・ジョージア・ブラウン
今でも歌われたり演奏されたりするスタンダード・ナンバー。
CD10-12、13.スワンダフル(テイク1&2)
テイク2が未発表ナンバー。ガーシュイン兄弟作のスタンダード・ナンバー。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1938年10月31日、11月9日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetハリー・ジェイムスHarry James
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampsonベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxレスター・ヤングLester Youngハーシャル・エヴァンスHerschel Evans
Guitarアル・ケイシーAl Casey
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第4集」(CBS SOPH 67〜68)

Record1 A-1.みんなの笑いものよEverybody's laughing10月31日
Record1 A-2.又朝帰りよHere it is tomorrow again10月31日
Record1 A-3.答えはキッスでSay it with a kiss11月9日
Record1 A-4.心は四月のようApril in my heart11月9日
Record1 A-5.あなたを決して見捨てないI'll never fail you11月9日
Record1 A-6.人は言うThey say11月9日
Record1 A-7.人は言うThey say11月9日

名義はテディ・ウィルソンで一連のブランズウィックへの吹込みである。大和明氏の解説に拠れば、このセッションから、サックス・セクションの強化が図られ、小編成から中編成への動きがみられ、全体的にビッグ・バンドの雰囲気が出始めているという。それは当時スイング・ジャズの黄金期であり、ビッグ・バンド・ジャズの全盛時代であったからであろうという。そしてこうした動きはリーダー、テディ・ウィルソンの希望であったのではないかという。それはこの半年後にウィルソンは、BGのバンドから独立し、自己のビッグ・バンドを率いることになるのであり、ビッグ・バンド演奏に既に心が向いていたと思われるからであるという。
このセッションでは、スイング時代を風靡したハリー・ジェイムスが加わり、当時の人気ぶりを裏付けるような、自信に満ちた華麗で明るいソロを取っている。またテナー・サックスはベイシー楽団から2人が参加しているがソロを取るのはいずれもレスターの方である。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」1枚目A面
Record1 A-1.「みんなの笑いものよ」
通常テディのセッションでは、ビリーのヴォーカルは1コーラスだけだが、この曲では、プレイヤーのソロをはさんで前後で歌うという例外的な構成が見られる。確かにアンサンブルはソフトで、如何にも当時のビッグ・バンド風である。ヴォーカルの後最初にソロを取るのは、テディで、続いてレスター、ハリーの短いソロが入り、少しだけビリーが歌って終わる。
Record1 A-2.「又朝帰りよ」
当時風のサックス・ソリのアンサンブルからハリーの短いソロが入り、ビリーのヴォーカルとなる。そしてテディはいつもの華麗なスタイルでスイングする。

Record1 A-3.「答えはキッスで」
先ずモートンがストレートに吹き、テディのピアノが入り、ビリーの歌となる。続くハリーのTpは明るくベリガン風のプレイだが、続くレスターのソロと比べると子供に感じてしまう。
Record1 A-4.「心は四月のよう」
まずベニー・カーターが華麗なプレイを披露する。ビリーの歌が入り、続くテディのソロが良い感じだ。そしてハリーのTpはここでもベリガンを思い出させる。続くテナーはレスターではなくエヴァンス。
Record1 A-5.「あなたを決して見捨てない」
TpとPのイントロから当時風のアンサンブルとなり、ビリーの歌に引き継ぐ。巨泉氏は珍しく甘さを出して歌っているという。続くTsはエヴァンスで、短いPソロが入り、ハリーのTpでエンディングを迎える。
Record1 A-6、7.「人は言う」
まずハリーがスイートでセクシーなソロを聴かせ、続くテディもリリカルなプレイを行う。そしてビリーも控えめな歌唱を行う。続くカーターのアルトがここでも華麗に吹き上げている。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」1枚目B面

<Date & Place> … 1938年11月28日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Cornetボビー・ハケットBobby Hackett
Tromboneトラミー・ヤングTrummy Young
Clarinet & Alto saxトゥーツ・モンデロToots Mondello
Alto saxテッド・バクナーTed Buckner
Tenor saxバド・フリーマンBud Freemanチュー・ベリーChu Berry
Guitarアル・ケイシーAl Casey
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsコジ―・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第4集」(CBS SOPH 67〜68)

Record1 B-1.あなたが欲しいYou're so desirable
Record1 B-2.あなたについて離れないYou're gonna see a lot of me
Record1 B-3.ハロー・マイ・ダーリンHello , my darling
Record1 B-4.月影の夢Let's dream in the moonlight

この11月に、ビリーはアーティー・ショウの楽団を退団した。そしてこのテディのバンドの方は、これだけ優れたメンバーを集めながら、テディは他のメンバーに余りソロを取らせていない。そういえばテディ以外のメンバーのソロは短くなってきているような気がする。ここではサックスを中心としたアンサンブルをバックにテディのピアノを浮き上がらせている。こうなるとオールスター・メンバーを揃えたブランズウィック・セッションは、意義が薄れてきたといえよう。こうした傾向は40年代に大きな人気を博するエディ・ヘイウッドのバンドなどにも影響を与えているといえよう。

Record1 B-1.「あなたが欲しい」
テディのソロは派手なグリッサンドを多用した華麗なものになってきた、そしてビリーはセクシーにねっとりと歌うとは巨泉氏。しかしテディのソロは音数を絞った実にモダンな素晴らしいものに思える。この頃のビリーは人気的にも絶頂で、「白いくちなし」の花を髪にかざして歌う美しいビリーの姿に多くの聴衆は酔ったという。

Record1 B-2.「あなたについて離れない」
この曲は先ず『貴方の想い出(Memories of you)』に実によく似ている。ここでテーマを吹くのはボビー・ハケットで、ハリー・ジェイムズのような派手さはないが、滋味に富んだ落ち着いた音色が好ましい。ビリーの歌唱もかなり抑えた表現で良い。
Record1 B-3.「ハロー・マイ・ダーリン」
ここでのビリーも抑制の効いたかなり押さえた表現で、そこが僕にも嫌味なく聴こえる所以であろう。
Record1 B-4.「月影の夢」
サックス中心のアンサンブルで始まる。トラミーのTb、テディのPとソロが入り、ビリーのレイジーなヴォーカルとなる。続く短いTsソロはチュー・ベリー。

<Date&Place> … 1938年12月29日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・クインテット(Benny Goodman Quintet)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsバディ・シャッツBuddy Schutz

1938年最後の録音は年も押し詰まった12月29日にクインテットとカルテットによって行われた。このクインテットで注目なのはこれまで加わっていなかったベースが加わっていることである。そしてその奏者としては名手ジョン・カービーが起用されている。

<Contents> …「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)

CD11-19.ピック・ア・リブ(パート1&2)Pick-a-rib(Part1&2)
CD11-20.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク1)I cried for you(take1
CD11-21.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク2)I cried for you(take2)
CD12-1.あなたはご存知ね(テイク1)I know that you know(take1)
CD12-2.あなたはご存知ね(テイク2)I know that you know(take2)
CD11-19.ピック・ア・リブ(パート1&2)
油井正一氏もその著『ジャズの歴史』のベニー・グッドマンの項で取り上げているので紹介しておこう。
曰く、
「彼のスタイルの第二期(1935〜1939年頃)の末期で、一度だけスタイルが目立って変わったことがあった。それは1938年12月に、『ピカリブ(Pick-a-rib)』を吹き込んだ前後で、メロディはいつもと違って著しく簡潔となり、音色は渋くなり、したがってフレイジングはギスギスして、ちょうどメズ・メズロウのスタイルそのままになった。
というのは、この年11月にフランス随一のジャズ批評家、ユーグ・パナシェが初めて渡米して、メズ・メズロウを、当代随一のクラリネット奏者であると激賞した。パナシェは、メズロウを使って、ビクターに数曲吹き込んだが、おそらくBGは、パナシェの批評に、大いに心を動かされて、”なるほど批評家としては、ああいうのをジャズ・クラリネットの最高というのか、それでは僕もスタイルを変えてやってみよう”と、メズロウ流に吹いたに違いないのだ。「ピカリブ」、「君に泣く(I cried for you)」には、この精神的動揺が明らかに現れて、目立った変化を見せている。このレコードは、ジョン・カービーの素晴らしいリズムと共に、グッドマン・コンボの傑作の一つである」と。
因みに野口氏は、この録音でのスタイルの変化等には特に言及していない。
SP盤2面に渡る演奏で、曲はBG自身がミュージカル「スインギン・ザ・ドリーム」のために書いたナンバーで、短いリフを基にしたもの。前半パート1は、BGのソロが中心で、パート2はブギーのリズムとなる。さらに野口氏は、録音に難点があり、カービーのベースは十分効果を上げていないと書いている。確かにほとんど聴こえないのが残念だ。演奏自体をメズロウ云々の情報を脇において聴いても、実に洒脱・モダンな演奏で素晴らしいと思う。
CD11-20、21.アイ・クライド・フォー・ユー(テイク1&2)
1920年代のポピュラー・ヒット曲で、テイク1がSP盤で発売されていたテイク。テイク2はLP時代に入って初めてレコード化された。
CD12-1、2.あなたはご存知ね(テイク1&2)
この曲だけ何故かカルテット(Dsのシャッツが抜けハンプトンに代わる)で演奏される。これも20年代のミュージカル・ナンバー。ハンプトンの名ドラマーぶりを発揮していて、カービーのずっしりとしたベース・ソロも聴き処となっている。

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