大和明氏は、「29年2月から3月という短い期間だが、ルイ・アームストロングが招かれてニューヨークに滞在した。そしてこの期間に4曲ほど録音が行われたという。残念ながらそのうちの1曲はオクラ入りとなってしまったが、そのうちの2曲はルイを歓迎するために当時ニューヨークのジャズ・シーンで活躍するミュージシャンが集められた。これが人種の垣根を超えた黒人と白人の混合セッションとなったのである。この詳しい経緯は、「ルイ・アームストロング 1929年」を参照。
1929年3月5日のレコーディングでは、3人の白人(ティーガーデン、ラング、サリヴァン)ミュージシャンがルイら3人の黒人ミュージシャンと共演を行った。そして6月4日には当時大変人気があった白人男性歌手シーガー・エリスの録音にルイが参加し、ここに初めてドーシー兄弟との共演が実現する。
| Vocal | … | シーガー・エリス | Seger Ellis |
| Trumpet | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong |
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey |
| Clarinet | … | ジミー・ドーシー | Jimmy Dorsey |
| Violin | … | ハリー・ホフマン | Harry Hoffman |
| Piano & Celeste | … | ジャスティン・リング | Justin Ring |
| Drums | … | スタン・キング | Stan King |
| CD8-21. | ‘ス・ポージン | S’posin |
| CD8-22. | トゥ・ビー・イン・ラヴ | To be in love |
録音の名義「シーガー・エリス」は当時大変人気があった白人歌手で、いわゆる「甘く切ないポップス・シンガー」である。しかしこの歌手のイカスところは自分の人気をバックに、多分自身が興味があったのだろう、当時一流のミュージシャンをレコーディングに起用しているところである。
そんなことからか1929年ニューヨークに来ていたサッチモに声がかかったのかもしれない。そこでドーシー兄弟と初顔合わせとなった。全体としては、ルイも、こういう甘いポップス・ソングのバックでは聴こえるか聴こえないかといったプレイぶりである。黒人ブルース・シンガーのバックを務めるように吹きまくり、エリスを目立たなくしては今後の芸能活動、どころか直近の命の保証も危うかったのではないか。かといっていてもいなくても同じでは、これも今後の芸能活動に響く。といったところか、「‘ス・ポージン」中間部では、「シンギング・トランペット」と呼ばれたように実に歌心溢れるソロを繰り広げている。
「トゥ・ビー・イン・ラヴ」では、ドーシー兄弟のソロも聴かれるが、特にトミーがルイのソロに挟まれてソロを取っている。しかし歌心と言い技量と言いルイとの差は歴然で、大和明氏などは、「気の毒」とさえ言っている。
| Vocal | … | シーガー・エリス | Seger Ellis |
| Trumpet | … | ルイ・アームストロング | Louis Armstrong |
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey |
| Clarinet & Alto sax | … | ジミー・ドーシー | Jimmy Dorsey |
| Violin | … | ジョー・ヴェヌーティ | Joe Venuti |
| Guitar | … | エディ・ラング | Eddie Lang |
| Drums | … | スタン・キング | Stan King |
この録音には6月の録音に加えてジョー・ヴェヌーティ、エディ・ラングという当時一流のジャズマンも加わっている。この録音がヒットしたかどうかは分からないが、バックの面子としては申し分のない顔ぶれである。なお、CD8枚組「黄金時代のルイ・アームストロング」においてルイがバックを務めた録音はこれが最後になる。
| Trumpet | … | ボブ・エフロス | Bob Effros | 、 | トミー・ゴット | Tommy Gott |
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey | 、 | チャーリー・バターフィールド | Charlie Butterfield? |
| Clarinet | … | ベニー・グッドマン | Benny Goodman | |||
| Reeds | … | ジョー・デュビン | Joe Dubin | 、 | Unknown | |
| Piano | … | アーヴィング・ブロドスキ | Irving Brodsky | |||
| Guitar | … | トニー・コルッチ? | Tony Colucci | |||
| Bass | … | ジャック・ハンセン | Jack Hansen | |||
| Drums | … | スタン・キング | Stan King |
CD-16.ドゥ・ヤ・ラヴ・ミー?(ジャスト・ア・タイニー・ビット・ドゥ・ヤ?)[Do ya love me ? (Just a tiny bit , do ya ?]
これはジャズではない。バンマスのベン・セルヴァンはたぶん日本ではあまり知られていないと思うが(僕はもちろん知らなかったが)、最も多くのタイトルのレコードを発表したというギネス記録を持っているという。なんとその数は1万3000とも2万曲ともいわれるらしい。ものすごい数である。
当時ドーシーもBGもいろんなところで仕事してたんだなぁ。