ベニー・カーター 1934年

Benny Carter 1934

僕が持っているベニー・カーターの1934年の録音は5月に行われたメズ・メズロウのセッションである。このレコードは、日本ビクターから1964年に「ジャズ・コレクターズ・アイテム」シリーズの1枚として発売されたもので、僕はいつかは忘れたが中古レコード店で見つけた購入した。タイトルは「メズロウ&ラドニア」とあるように、クラリネットのメズ・メズロウとトランペットのトミー・ラドニアの4つのセッションから全16曲を収めている。そもそも今ではメズロウやラドニアのレコードはあまり見かけないので、これを見つけた時には嬉々として買ったことを覚えている。
レコード裏面のライナー・ノーツは油井正一氏が書いていて、それによれば、このレコードは、大衆受けを狙ったものではなく、最初から本当のジャズ愛好家のみを対象として製作された、多分にハイ・ブロウなレコーディング・コンボの傑作集である。
まずメンバーがすごい。まさにオール・スターの顔ぶれで、白黒混合のレコーディングとしてはごく初期のものと言える。カミンスキー、メズロウ、フリーマンはオースチン・ハイスクール・ギャング出身のシカゴアン達であり、ベニー・カーター、ジョン・カービーはご存知ヘンダーソンやドン・レッドマンなどの楽団で名を売った名手、そしてウェッブも自身のバンドを持つ強力なリズムマンであり、そしてなんといってもウィリー・ザ・ライオン・スミスのコンボ・レコーディングはあまり見かけないのである。実に興味深い録音と言える。
粟村政昭氏は『ジャズ・レコード・ブック』メズロウの項でこのレコードを取り上げ、「メズロウの真価は、このレコードのようなより後年のレコーディングの中に記録されている。(中略)オール・スターによるスイング風のこれも歴史的な名演集である」と高く評価している。確かに素晴らしい演奏ばかりである。

<Date&Place> … 1934年5月7日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … メズ・メズロウ・アンド・ヒズ・リズム(Mezz Mezzrow and his rhythm)

Band Leader , Clarinet & Alto saxメズ・メズロウMezz Mezzrow
Trumpetマックス・カミンスキーMax Kaminskyルノー・ジョーンズReunald Jonesチェルシー・クォーリーChelsea Quealey
Tromboneフロイド・オブライエンFloyd O’Brien
Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxバド・フリーマンBud Freeman
Pianoウィリー・ザ・ライオン・スミスWillie the Lion Smith
Bassジョン・カービィJohn Kirby
Drumsチック・ウェッブChick Webb

ともかく豪華な顔ぶれである。多分僕が持っているチック・ウエッブがサイドマンとして参加したレコードはこれだけである。

<Contents> … 「メズ・メズロウとトミー・ラドニア」(Victor RA-5324)

F
A面1.センディン・ザ・ヴァイパースSendin' the vipers
A面2.オールド・ファッションド・ラヴOld fashioned love
A面3.カルメット街35丁目35th and Calumet
A面4.アポロジーApologies
A-1.[センディン・ザ・ヴァイパース]
メズロウのClソロで始まり、アンサンブルなども計算されているように思えるが、油井氏によればジャム・セッションだという。グロウルのTpソロはルノーでこの人のソロは極めて珍しいという。続くアルト・ソロはベニー・カーター、そしてTbソロが入り、再びアルト・ソロそして次のTpはカミンスキー、さらにスミスのソロが入り、合奏でエンディングに向かうがフェイド・アウトで終わるのは珍しい。
A-2.[オールド・ファッションド・ラヴ]
アレックス・ヒルとメズロウのアレンジ。ニューオリンズ風でTbがメロディーを吹く。Tpソロはカミンスキー。フリーマンのソロが入る。
A-3.[カルメット街35丁目]
「カルメット街35丁目」とは、サンセット・カフェをはじめ、歴史に残るシカゴのジャズ・スポットが集まっていた町の名前だという。オブライエンとメズロウのアレンジ。Tbソロ、Asソロからアンサンブルを経てエンディングに向かう。
A-4.[アポロジー]
「許してね」ということでメズロウの作曲になっているが、実はキング・オリヴァーの「ディッパーマウス・ブルース」をそっくりいただいたのでこう名付けたという。
ブギー調のナンバーで、ニューヨーク派の代表的なピアニスト、スミスがブギーを弾くのが興味深い。ブギー調であり、スイング的なリフが入るところが面白い。全般を通して短いが各自のソロがそれぞれ聴き応えがあって実に楽しい演奏となっている。ジョン・カービー、チック・ウェッブのブラシによるソロは珍しい。ただ惜しむらくはピアノの録音があまり良くなく聴きづらい。耳を凝らして聴いてみると意外と前衛的なことをやっているような気がする。

”Benny Goodman collector's gems 1929-45”1枚目B面

<Date&Place> … 1934年8月16日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)

 
Clarinet & band leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Trumpetラス・ケースRuss Caseジェリー・二アリーJerry Nearyサム・シャピロSam Shapiro
Tromboneレッド・バラードRed Ballardジャック・レイシーJack Lacey
Alto saxハイミー・シャーツァーHymie Scherterベン・カンター
Tenor saxアート・ロリーニArt Rollini
Pianoクロード・ソーンヒルClaude Thornhill
Guitarジョージ・ヴァン・エブスGeorge van Eps
Bassハンク・ウェイランドHank Wayland
Drumsサミー・ウェイスSammy Weiss

<Contents> … 「新たなる宝庫・黄金時代のベニー・グッドマン」(Columbia CSM 890〜1)

record2 A-2.テイク・マイ・ワードTake my word

この録音にカーターは参加していないが、作曲面でアーヴィング・ミルズ、ヘンリー・ピースと共作し、アレンジを行っている。この時代最も素晴らしいという評判だったカーターの面目躍如の素晴らしいアレンジで、この録音の価値を高めている。サックスを中心にした柔らかなアンサンブルが見事で、後に独特のクラウディ・サウンドで一世を風靡したクロード・ソーンヒルがピアノで参加しており、後々まで影響を及ぼした可能性もある。

次の9月11日の録音がややこしい。同日に同一メンバーによって2面分が録音された。ただし夫々のバンド名が異なるのである。一つは”Vincent Rose and his orchestra”、もう一つは”The Modernists”である。レコード解説の飯塚氏の解説によれば、”The Modernists”による「センチになって」(I'm getting sentimental over you)のみがカーターがアレンジを担当したという。詳しくは「ベニー・グッドマン 1934年」をご覧ください。

「スタディ・イン・フラストレイション」CD3枚目

フレッチャー・ヘンダーソンの1934年9月11日の録音について、CDの録音データには、ベニー・カーターが参加しているという記載はない。しかしWeb上のディスコグラフィーには、アルト・サックス奏者として参加しているとある。もちろん本当のところは分からないが、一応ここに掲載する。
この録音について、ガンサー・シュラー氏は大変厳しい評を下している。
「1934年7月のデッカのための12面分の録音で、我々はヘンダーソン楽団の末路に立ち会うことになる。」まず、Web版ディスコグラフィーによれば、ヘンダーソン楽団に1934年7月に録音は無く、この次の録音は9月11日である。これは単なる録音日の違いだけでとらえてよいのかそしてどちらの日付が正しいのかは現状僕には判断のしようがないので、いつものようにこのまま続ける。
「これらの録音は、驚異的なまで軽快で、指を鳴らしたくなるようなスイングやウエブスターやレッド・アレンのいくつかのソロがあるから、そしてまたスイング時代の間や直後に育ったすべての人間にとっておそらくは格別な意義があるものなのだから、称賛されてよいのかもしれない。しかしながら、こうした魅力とは別に、バンドのビートが礼儀正しくなってきたことがはっきり聴き取れる。
そして数年経つと多くの白人の楽団がこの方向をさらに推し進めて、これを『ビジネスマンのバウンス』にまで変えてしまうことになるだろう。ほとんど欠陥のないアンサンブルの楽句が単に耳障りの良いものに転化している様子もうかがえる。こうした楽句は抑制が効いているが、感情が希薄で、内容に乏しく、旋律的関心を犠牲にしてまで、スイングに固執する。そうする過程で、ソロイストたちの周囲に、彼らの動きを微妙に封じるような和声の網目を被せて行くのだ。」
要旨が分かりにくいのだが、要はヘンダーソン楽団の1934年の次に行われる7月あるいは9月の録音は、耳当たりは良いが野趣や個性にかけたつまらない白人ジャズの先駆けになったということである。これは、ベニー・グッドマンやグレン・ミラーのことを言っているのだろうか?

「スタディ・イン・フラストレイション」CD3枚目

<Date & Place> … 1934年9月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Fletcher Henderson and his orchestra)

Band leader & Pianoフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetラッセル・スミスRussell Smithアーヴィング・ランドルフIrving Randorphヘンリー・レッド・アレンHenry “Red”Allen
Tromboneクロード・ジョーンズClaude Jonesケグ・ジョンソンKeg Johnson
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Clarinet & Alto saxラッセル・プロコープRussell Procopeヒルトン・ジェファーソンHilton Jefferson
Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Piano CD1&4ホレス・ヘンダーソンHorace Henderson
Guitarローレンス・ルーシーLawrence Lucie
Bassエルマー・ジェイムスElmer James
Drumsウォルター・ジョンソンWalther Johnson

<Contents> … "A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)&"Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)

CD3-17、CD1-1.ワイルド・パーティーWild Party
CD3-18、CD1-2.ラグ・カッターズ・スイングRug cutter’s swing
CD3-19、CD1-3.ホッター・ザン・エルHotter than‘ell
CD3-19、CD1-4.ライザLiza(all the clouds‘ll roll away)
CD3-17、CD1-1.[ワイルド・パーティー]
クラリネットのリードするアンサンブルで始まる。ソロもClからTb、As、Tp、Tsと短いソロを繋ぎアンサンブルのエンディングに向かう。ピアノは弟のホレス。
CD3-18、CD1-2.[ラグ・カッターズ・スイング]
ミュートTpのリードするアンサンブルで始まる。ソロはまずCl続いてTbそしてAs、Ts、TbとTs、オープンTpと目まぐるしい。
CD3-19、CD1-3.[ホッター・ザン・エル]
この曲もアップ・テンポのナンバー。ソロはまずCl、そしてTp、Ts。サックス・セクションとブラス・セクションの交換があり盛り上げて終わる。カーターらしいアレンジである。かなり難しそうなアンサンブルも聴かれる。
CD3-20、CD1-4.[ライザ]
ガーシュイン作のスタンダード・ナンバーで、ピアノは弟のホレスが担当している。これもミディアム・テンポの軽快なナンバーである。ソロはまずAsが取りTb、As、Tp、Pと短いソロが差し込まれ、アンサンブルに戻る。
全体として感じることは、古株のバスター・ベイリーのクラリネット、当時はすでにアルト奏者としてアレンジャーとして名を上げていたベニー・カーター、新加入のベン・ウエブスターに多くのソロの機会が与えられていたようだ。但しソロは短く色々飛び出してくるので落ち着かない。聴き処も多く僕には、シュラー氏が目くじらを立てるほどの演奏とは思わないのだが…。

<Date & Place> … 1934年12月13日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・カーター・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Carter and his orchestra)

Band leader , Clarinet & Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Trumpetアーヴィング・ランドルフIrving Randorphオーティス・ジョンソンOtis Johnsonラッセル・スミスRussell Smith
Tromboneベニー・モートンBenny Mortonケグ・ジョンソンKeg Johnson
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarクラレンス・ホリデイClarence Holiday
Bassエルマー・ジェイムスElmer James
Drumsウォルター・ジョンソンWalther Johnson

上記メンバーにアルト・サックスにベン・スミス(Ben smith)、ラッセル・プロコープ(Russell Procope)が加わっているというディスコグラフィーと加わっていおらず上記だけというディスコグラフィーがある。ギターにビリー・ホリデイの父ちゃんクラレンス・ホリデイが加わっている。フレッチャー・ヘンダーソン楽団の1932年の吹込み以来である。

<Contents> … 「ベニー・カーター1933/39」(Philips 15PJ-4)

A-4.シュート・ザ・ワークスShoot the works
A-5.ドリーム・ララバイDream lullaby
A-6.エヴリバディ・シャッフルEverybody shuffle
A-4.[シュート・ザ・ワークス]
最初に出るTpソロはカーターではなく、ランドルフだという。その他の記載は全くないがTsはウエブスターでいいのだろうか?Pは誰なんだろう?またこれも記載がないがアレンジは当然カーターということで夜のだろうか?やわらかいサックス中心のアンサンブルが心地よい。
A-5.[ドリーム・ララバイ]
メランコリックなスロウ・ナンバー。初期のウエブスターの悠揚迫らぬプレイが素晴らしい。この頃からウエブスターはバラード・プレイを得意としていたのだろう。
A-6.[エヴリバディ・シャッフル]
フランスのジャズ評論家ユーグ・パナシェがカーター楽団の代表作の一つとして挙げている傑作という。ここではカーターによるサックス・セクションの典型的な歌わせ方が堪能できるとは解説の大和明氏。確かに最初の部分はホーン・セクションとブラス・セクションの対比が際立つ感じのアンサンブルである。ソロは、カーター(As)⇒ランドルフ(Tp)⇒ウエブスター(Ts)⇒モートン(Tb)⇒カーター(As)である。エンディングの合奏部分は迫力満点である。

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