レスター・ヤング 1938年
Lester Young 1938
レスター・ヤングはこの年かなり多くのレコーディングを行っている。レスター・ヤングと言えば現代ではジャズ史上に残る偉大なる巨星の一人であり、希代のインプロヴァイザーとして評価はゆるぎないものと思われるが、当時1930年代後期のこの時期ではどうだったのであろう。
ヤングは約半年ほど名門フレッチャー・ヘンダーソンの楽団に在籍したこともあるが、主な活躍舞台は、カンサス・シティであり、わずか1年あまり前に初めてレコーディングを経験したばかりでありカウント・ベイシー等と共にニュー・ヨークに再進出したばかりの、知る人ぞ知るといった程度のミュージシャンだったのではないかと思う。
さらに評論家大和昭氏は、レスター・ヤングは1936年11月の初レコーディングの時点ですでに完成されていたとし、そのスタイルは極めてユニークなものであったとする。1930年代テナー・サックス会は圧倒的にコールマン・ホーキンスの支配下にあったとする。すなわち男性的でたくましいホット・ヴィブラートを伴った豊かな堂々たる音色を持ち、豪放無比なフレイズを迫力に満ちた力強いアタックで聴衆をグイグイと引っ張っていった。一方のレスター音色がソフトで小さく、ヴィブラートが少なく滑らかで女性的な感じを与えるとする。当時の代表的なテナー奏者、チュー・ベリー、ベン・ウエブスター、ハーシャル・エヴァンス、ジョー・トーマスなどは皆ホーキンスのスタイルから出発している。しかし異端ともいえるレスターのスタイルのフォロワーは存在しなかったというのである。
しかし冒頭で述べたように、”異端視”されていたレスターは実際には数多くのセッションに呼ばれているのである。つまり彼をレコーディングに呼びたがっている人が多かったということであろう。勿論後年評価の高まったレスターのレコードが数多く発売されているという事情もあるであろう。しかし彼の録音の多さはそれだけが原因ではないだろう。というのはレスター派のレスター本人とホーキンス派のハーシャル・エヴァンスがいるベイシー楽団においてソロを取っている数は圧倒的にレスターが多いのである。僕が思うにその原因は、圧倒的なインプロヴィゼイション能力の高さなのではないだろうか?レスターなら凡百ではない何か特別なソロを吹いてくれるのではないかという期待させる何かを持っていたと思うのである。
<Date&Place> … 1938年1月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1937年10月13日)からの変更点
Trumpet … ビリー・ヒックス ⇒ カール・ジョージ
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record2.A-5. | ジョージアナ | Georgianna |
| record2.A-6. | ブルース・イン・ザ・ダーク | Blues in the dark |
1938年のベイシーは年初早々1月3日から録音を始めている。
record2.A-5.ジョージアナ
最初に出てくるのはハーシャル・エヴァンス(Ts)で、ドライヴ感豊かな情熱溢れるソロが快調である。こういったテンポでのエヴァンスには、ホーキンス派と言っても、彼独特の湿ったトーンと相俟って独特の個性を作り出しているとは解説の大和明氏。ラッシングの後に出るレスター・ヤングのソロもリラックスした好演である。このように対照的な実力ある2人のテナー奏者がいたことは、ベイシー楽団の強みであった。
record2.A-6.ブルース・イン・ザ・ダーク
全編に渡ってグルーミーな雰囲気を漂わせたベイシー作のブルース・ナンバー。エリントンのジャングル・スタイルを思わせるアンサンブルをバックにプレイするバック・クレイトン(Tp)のソロに続いて、ラッシングがブルーなフィーリングで歌っている。
ヴォーカルの2コーラス目から付けられるエド・ルイスのオブリガードは、ルイ・アームストロングの”Gully low blues”のソロをそのまま引用したもので、ルイのメロディ・ラインの作り方が直接影響として表れているという。ブルース・フィーリング溢れる間を活かしたベイシーのソロも素晴らしい。
<Date & Place> … 1938年1月6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332〜50333)
| Record1 B-5. | 一目惚れ | My first impression of you |
| Record1 B-6. | 君微笑めば | When you're smiling |
| Record1 B-7.&Record2 B-2. | 君微笑めば | When you're smiling |
| Record1 B-8. | 貴方が私を好きだなんて | I can't believe that you're in love with me |
| Record1 B-9. | 貴方が私を好きだなんて | I can't believe that you're in love with me |
| Record1 B-10. | 夢がかなえば | If dreams come true |
1938年の最初のセッションはピアニストのベイシーを除いたベイシー楽団の精鋭メンバーが顔をそろえることになった。このセッションについて、解説の大和明氏は、「テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションの白眉となった演奏の一つ」と非常に高く評価している。
Record1 B-5.「一目惚れ」
いわゆる30年代の小唄の一つだが、ビリーの一途で可憐な歌唱とレスターのリラックスした歌心溢れるソロによって名演となった。イントロとヴォーカル・バックのオブリガードはクレイトン。ヴォーカルの後のウィルソンのピアノ・ソロも秀逸。全てが一級品である。
Record1 B-6、7.「君微笑めば」
以前から名唱の誉れ高いもので、2ヴァージョン収められている。そしてこのうちのB-7の方が「ザ・テディ・ウィルソン」にも収められているカブルナンバーである。解説に拠れば、B-6がテイク3で、B-7がテイク4のようで、元々両ヴァージョンともSP盤では発売された。しかしLPになって収録されてきたのは、テイク3だという。テイク4がLPに収録されたのは、「ザ・テディ・ウィルソン」が初めてだという。ということは、「ビリー・ホリディ物語」は「ザ・テディ・ウィルソン」の後に出たことになる。確かに僕の記憶でも、「ザ・テディ・ウィルソン」が先に出た記憶がある。
ビリーはいつものように原メロディーから高い音域から歌い始め、まるで無頓着と思われるほどフレイズを引き延ばすようにして歌う平坦な唱法で、伴奏との間に対照的な効果を上げる。何といっても見事なのは、テディの楽し気にスイングするソロ、そしてレスターのソロは30年代屈指のソロで、原メロディーにとらわれないモダンな感覚だが、原曲の雰囲気も忘れないまことに立派なもの。モダン・エイジに入ってからも、リー・コニッツやルビー・ブラフなどにそのまま引用されるなど、多くのプレイヤーの手本となった。またこれらの名唱、名演を支えるリズム隊も素晴らしいとしか言いようがない。
因みに村上春樹氏は、その著『ポートレイト・イン・ジャズ』のビリー・ホリディの項で次のように述べている。「ビリー・ホリディの優れたレコードの中で、敢えて1曲を選ぶとすれば、迷わずに「君微笑めば」を僕は選ぶ」と。彼女が”When you are smiling , the whole world smiles with you”と歌うと、世界は本当に微笑むのだと書いている。
Record1 B-8、9.「貴方が私を好きだなんて」
本来恋が成就した歌として歌われ、明るくハッピーに、アップ・テンポで歌われるのが常だったという。大和氏は、それをビリーは思い切ってテンポを落とし、恋の成就をまるで信じられぬような、さらにはこの幸せが本当のものだろうかという不安や恐れまでも表現しようとしているとし、若干22歳の若い女性の歌とは信じられぬほど、愛の機微を知り尽くしたような表現であると述べている。
クレイトン、モートン、レスターと繋がるソロは正に黄金のリレーである。ヴォーカル・バックのウィルソンもリリカルで彼の本領を発揮したものだ。
Record1 B-10.「夢がかなえば」
大橋巨泉氏は全体的にコーニー(古臭い)な感じだと述べ、ビリーも白タマが多い歌で、まだ持て余している感じだとは巨泉氏。
<Date & Place> … 1938年1月12日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)
| Record2 A-1. | これがスイング | Now they call it swing |
| Record2 A-2. | センチになって | On the sentimental side |
| Record2 A-3. | センチになって | On the sentimental side |
| Record2 A-4. | 灯台もと暗し | Back in your own back yard |
| Record2 A-5. | 女が男を愛する時 | When a woman loves a man |
前録音から6日後の録音で、メンバーも全く同じ。しかしこちらはビリー名義になっている。解説に拠ればこれがビリーがベイシー楽団専属歌手としての最後の録音であるとのことで、この翌月ベイシー楽団を退団する。
前回セッションが抜群の出来だっただけに、このセッションは悪くはないがやや平凡に感じるとも解説の大和氏は言う。
Record2 A-1.「これがスイング」
歌詞の内容に合わせてテディはやや古臭いタッチでイントロを弾き、ビリーの歌が始まるとスイング風に弾いている。芸が細かい。歌詞を大事にして生涯スキャットを歌わなかったビリーだが、サビの部分にスキャットの歌詞がある。歌詞とはいえビリーのスキャットが聴ける珍しい作品。
Record2 A-2、3.「センチになって」
僕はこの邦題は辞めた方がいいと思う。普通「センチになって」と言えば、トミー・ドーシーの大ヒット曲で、同楽団のテーマ曲である"I'm getting sentimental over you"のことであるからである。
同じ曲の別テイクだが、イントロ部をA-2はギター、A-3はピアノで弾いており、この時代にしては別の試みするのは珍しい。さらに珍しいのはほぼ単音の音が聴こえないフレディー・グリーンがメロディーを弾いていることである。さらにはビリーのバックでオブリガードも弾いている。モートンはいつもと変わらずほぼテーマを吹く。このモートンに関して巨泉氏は「能がない」と厳しいが、これがこの人の持ち味で美しいトーンで、トロンボーンの特徴を生かした茫洋としたプレイは味があっていいと僕は思う。そしてオブリガードにテディのリリカルなピアノが付けば、なごみの極致とさえ思える。
Record2 A-4.「灯台もと暗し」
まずイントロのクレイトンの素晴らしい。その好調さはビリーの歌のオブリガードでも続く。そして続くレスターのリラックスしたソロも素晴らしい。
Record2 A-5.「女が男を愛する時」
レスターのイントロから淡々と語りかけるように歌い出すビリーは既に完成の域に達しているとは、巨泉氏。中間のクレイトン節も心地よい。
ベニー・グッドマンの「カーネギー・ホール・コンサート」への協力
この年1938年1月16日伝統あるニュー・ヨークのカーネギー・ホールで、ベニー・グッドマンによる歴史的なコンサートが開催される。なぜ「歴史的」なのか、コンサートの全容などについては「ベニー・グッドマン 1938年」を参照。このコンサートを全面的に支援するジョン・ハモンド氏からの声掛けもあったのであろう、ベイシー自身初めベイシー楽団の強者たちがカーネギー・ホールのステージに立つのである。
コンサート第1部の3曲目にベイシー楽団の大ヒットナンバー、「ワン・オクロック・ジャンプ」がBG楽団によって演奏された。そしてベイシー一党はその数曲後の「ジャム・セッションーハニーサックル・ローズ」に登場し、BG楽団選抜メンバー及び同じく協力出演していたデューク・エリントン楽団選抜メンバーとジャム・セッションを繰り広げるのである。
<Date&Place> … 1938年1月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ジャム・セッション(Jam session)
CD1-13.ジャム・セッション準備
ここでエリントニアンのジャニー・ホッジス、ハリーカーネイにカウント・ベイシー楽団のメンバー、バック・クレイトン、レスター・ヤング、フレディー・グリーン、ウォルター・ペイジ、そして御大のベイシーが加わりジャム・セッションを行う。多分カーネギー・ホールに集った聴衆たちは「ジャム・セッション」なるものを聴くのは初めてだろうし、それどころが「ジャム・セッション」がどんなものかも知らなかったろう。ここまで一切MCによる解説がないが大丈夫だったのだろうか?
CD1-14.&record1.B-1.ハニーサックル・ローズ
ものすごいメンバーである。従来のレコードでは13分55秒という演奏時間で、それなりに聴き応えがあるなぁと思っていたら、CDの解説によると本来は16分33秒の演奏で、クレイトンの第3コーラス、カーネイとグリーンのソロがカットされていたという。何ということだ!グリーンのソロは極めてまれで貴重なのに…。ともかくこの<完全版>CDで復活されたことは喜ばしい限りである。
曲はファッツ・ウォーラー作のスタンダード・ナンバー。ベイシー楽団はニュー・ヨークに出て最初に吹き込んだナンバーでもある。先ずベイシーが短いイントロを弾き、テーマのアンサンブルに入る。ここでリードを取るのはハリー・ジェイムス。アドリブ・スペースに入り最初はレスター(Ts)⇒ベイシー(P)⇒クレイトン(Tp)⇒ホッジス(As)⇒ペイジ(B)⇒カーネイ(Bs)⇒BG(Cl)⇒グリーン(Gt)⇒ジェイムス(Tp)⇒集団アドリブ⇒レスター(Ts)⇒クレイトン(Tp)⇒リフからエンディング。
ともかく豪華極まりないリレーだ。最初のレスターのソロから2度目のクレイトンのソロまでどれも聴き応え十分である。とかく「ジャム・セッション」は垂れ流し的な演奏で締まりがないと批判する人がいる。確かにそういう演奏もあることは事実だが、ここでの演奏は各自が持ち味を発揮した素晴らしい演奏の連続で十分に聴くに値すると思う。
個別のソロではなく、ここではいくつかのエピソードを掲げておきたい。まず最初のクレイトンのソロの2コーラス目が終わったところでちょっとした聴衆の反応が聴かれる。これはクレイトンのソロは2コーラスで終わる予定だったのか次のホッジスが前に進み出ていたがクレイトンが3コーラス目を吹きだしたので慌てて席に戻ったことに対する反応だという。
後にBG楽団のギタリストとなったターク・ヴァン・レイクはフレディー・グリーンにソロを弾かせようとしたのは、BGの無神経さを表すものだと批判している。ソロは弾かずリズムに専念するぐり−ンはギターをそのようにセッティングしているからだという。しかしソロを求められたグリーンはコードによるソロを2コーラスに渡って展開し見事に自分の仕事を成し遂げている。
ともかく各スターたちのソロが楽しく、そして最後はリフを中心としたアンサンブルがノリノリで、ジャズは楽しいなぁと思いわせてくれる傑作であることは間違いない。
BGのカーネギー・ホール・コンサートから1か月、ベイシーはデッカのレコーディング・スタジオに入る。
<Date&Place> … 1938年2月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年1月3日)からの変更点
Trumpet … カール・ジョージ ⇒ ハリー・エディソン(Harry Edison)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)&"Hall of fame/Lester Young"(Past perfect 220149)
| record2.A-7. | セント・フォー・ユー・イエスタディ | Sent for you Yesterday |
| record2.A-8.&CD5-3. | エヴリー・タブ | Every tub |
| record2.B-1. | ナウ・ウィル・ユー・ビー・グッド | Now , will you be good ? |
| record2.B-2.&CD5-2. | スゥインギン・ザ・ブルース | Swingin’the blues |
record2.A-7.セント・フォー・ユー・イエスタディ
ジャンプ・ブルースでラッシングが最も得意としたナンバー。初めに出るアルト・ソロがジョニー・ホッジスを思わせるような吹奏である。またこのTpオブリガード及びソロについては、バック・クレイトン説(レイモンド・ホリックス氏)とハリー・エディソン説(ユーグ・パナシェ氏)があるが、大和氏はハリー・エディソンだと思うとしている。
record2.A-8.&CD5-3.エヴリー・タブ
ベイシー、ダーハムの共作で、典型的なカンサス・スタイルのジャンプ・ナンバー。リズム隊の躍動感あふれるビートに乗って、次々と繰り広げられるソロの共演が楽しめる。ソロ・オーダーはレスター⇒ベイシー⇒Tp(?)。いずれも聴き応え十分のソロである。骨太のたくましいスイングとはまさにこれ!
record2.B-1.ナウ・ウィル・ユー・ビー・グッド
ラッシングのリラックス・ムードのヴォーカルの後に出るTpソロについても、エディソンかどうかという論争があったという。大和氏曰く、このソロはレコード2.A面7「セント・フォー・ユー・イエスタディ」と全く同じなのでエディソンであると推定されている。逆にこれくらい俺にも吹けるぞと、クレイトンかルイスが吹いて見せたとしてもおかしくないような気がするが。
record2.B-2.&CD5-2.スゥインギン・ザ・ブルース
ベイシー作曲の典型的なリフ・ナンバー。元は1929年にエリントンとババー・マイレイがつくった”Doin' the Voom Voom”を素にフレッチャーとホレス・ヘンダーソン兄弟が31年に作り変えた”Hot and anxious”と”Comin' and goin'”という2曲のブルースが元になっているという。
単音を重ねながらアドリブに入っていくレスター独特の手法が新鮮であるとは大和氏。続けてレスターとエヴァンスの対照と同じように、かっちりと引き締まったクレイトンと艶があり華麗なエディソンのコントラストが見事だという。
<Date&Place> … 1938年6月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カンサス・シティ・ファイヴ(Kansas City Five)
<Contents> … "From Spirituals to Swing complete legendary 1938-1939 Carnegie hall concert"(Definitive records DRCD 11182)&"From Spirituals to Swing"(Vanguard KICJ 2051/2)
| CD1-26. | レディ・ビー・グッド | Lady be good |
| CD2-5. | モーギッジ・ストンプ | Mortgage stomp |
ベイシー・バンドのピック・アップ5人による「カンサス・シティ・ファイヴ」による演奏。レコードの表示でこの名称が使われているので迷ったがここにも入れた。ベイシー楽団のメンバー5人が参加した場合は「カンサス・シティ・ファイヴ」ということで、特別に名前に意味はないのであろうが、「カウント・ベイシー・クインテット」とかの名称にして欲しかった。多分そうするとデッカとの契約に触れるのであろう。
「レディ・ビー・グッド」
ベイシー楽団の十八番。イントロはベイシーのピアノで始まり、クレイトン(Tp)、レスター(Ts)とソロが続く。後半には2小節ずつのソロの交換がある。ペイジのベースがビンビンである。
「モーギッジ・ストンプ」
レスターのメロディー吹奏でスタートする。ソロはまずベイシー、クレイトン、レスターと続き再びベイシーへ。ここでもペイジのベースが唸っている。
<Date&Place> … 1938年6月6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年2月16日)と同じ
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record2.B-3. | ママ・ドント・ウォント・ノー・ピース・アンド・ライス・アンド・ココナツ・オイル | Mama don't want no peas an’rice an’coconut oil |
| record2.B-4. | ブルー・アンド・センチメンタル | Blue and sentimental |
| record2.B-5. | ドッギン・アラウンド | Doggin’around |
record2.B-3.ママ・ドント・ウォント・ノー・ピース・アンド・ライス・アンド・ココナツ・オイル
ラッシングとベイシーのピアノをフューチャーしたナンバーで、リラックスした雰囲気が楽しめる。
record2.B-4.ブルー・アンド・センチメンタル
ハーシャル・エヴァンスの代表作として有名。このバンドとしては珍しいスロウ・ナンバー。ラプソディックに歌い上げるエヴァンスのソロに彼のセンシティヴな面が聴き取れる。珍しいレスターのクラリネット・ソロもさわやかな中にも強く訴えかけるものがあるとは大和氏。
record2.B-5.ドッギン・アラウンド
これもエヴァンス作のこちらはアップ・テンポのスインギーなナンバー。大和氏はさすがに以下のような細かい指摘している。「エヴァンスのソロ・コーラスのブリッジ部分にレスター流の息継ぎが見られることが興味深い。この演奏の圧巻は何といってもベイシーのソロの最後の2小節を潜り抜けながら、流れるようにスムーズでリラックスしたアドリブを展開していくレスターのソロ・コーラスではないだろうか。彼の代表的ソロの一つに上げたい好演である。」
<Date&Place> … 1938年8月22日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年6月6日)からの変更点
Trombone & Guitar … エディー・ダーハム ⇒ ディッキー・ウエルズ(Dickie Wells)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)&"Hall of fame/Lester Young"(Past perfect 220149)
| record2.B-6. | ストップ・ビーティン・アラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ | Stop beatin' around the mulberry bush |
| record2.B-7. | ロンドン橋落ちた | London bridge is falling down |
| record2.B-8.&CD5-5. | テキサス・シャッフル | Texas shuffle |
| record2.B-9.&CD5-4. | ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド | Jumpin’at the woodside |
record2.B-6.ストップ・ビーティン・アラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ
大和氏によれば、これはポップス・ファン向けのナンバーであるという。それでありながらベイシー・イディオムが演奏の端々に聴き取れるところはさすがだとは大和氏。
record2.B-7.ロンドン橋落ちた
前曲同様、一般受けを狙った作品で、日本でもよく知られた曲。そうであってもベイシーは前半に、モートン、レスター、ウエルズを配しジャジーな雰囲気を創り上げている。ヴォーカル前のウエルズのソロは快演である。
B-6、B-7のような曲を演るのは、もしかしたらトミー・ドーシーの楽団の影響かもしれない。「スイング・クラシック」やフォーク・ソングから題材を得てヒット曲を出し大衆の支持を得ながら、しっかりとジャズもやる=バンド経営の極意と考えていたのかもしれない。
record2.B-8.&CD5-5.テキサス・シャッフル
エヴァンスの作・編曲によるカンサス・ジャズの雰囲気を盛り込んだ典型的なジャンプ・ナンバー。オール・アメリカン・リズム・セクションによる見事なリズムに乗せてベイシーが絶妙なタイム感覚を示す。各々のプレイヤーのソロも快調で、特にレスターのスインギーでユニークなクラリネット・ソロが印象的である。
record2.B-9.&CD5-4.ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド
『ワン・オクロック・ジャンプ』と並ぶベイシーの代表作。ベイシー・バンドの前身”Jammin' for the jackpot”が元になっているという。タイトル中の”Woodside”とは、当時ベイシー楽団が出演したことのある”Woodside hotel”のこと。ドライヴ感に満ちた力強いベイシーによるイントロから、典型的なリフを重ねたジャンピング・テーマに入るが、ウォーレンのホットなブリッジがよく利いている。スインギーなクレイトンのソロを経て、例によってユニークなスタートで始まるレスターのアドリブに入る。エヴァンスのクラリネット・ソロも強烈な響きで迫り、バンド全体が煮え切っているかのようなドライヴ感に包まれたホットな演奏である。
<Date & Place> … 1938年9月15日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)
アーティー・ショウの楽団に移ったが、ここではなじみのベイシー楽団のメンバーを中心としたセッションを繰り広げている。ピアノのマーガレット・ジョンソンはテディ・ウィルソン派と云われる。確かにブラインド・テストをしたら「テディ・ウィルソン」と答える人が多いだろう。彼女はこの録音の後20歳で結核のため鬼籍に入る。彼女の唯一の録音だという。
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SOPH 65-66)
| Record2 B-5. | 君を想いて | The very thought of you |
| Record2 B-6. | 云い出しかねて | I can't get started |
| Record2 B-7. | 夢のデイト | I've got a date with a dream |
| Record2 B-8. | 貴方は誰かのもの | You can't be mine |
Record2 B-5.「君を想いて」
ここでレスターはクラリネットを吹いているのが珍しい。ビリーはクレイトン、レスターと一緒でフレイズも一段と冴えているとは巨泉氏。僕は歌に嫌みがないところが気に入っている。
Record2 B-6.「云い出しかねて」
ビリーは初期のような高音を使った挑戦的な唱法を取っているが、この曲には合わないと巨泉氏も書いている。僕もそう思う。救いはレスターのソロで深くゆったりとしてソロで、このソロはレスターの中でも出色のものではないかと思う。
Record2 B-7.「夢のデイト」
巨泉氏はまたもやつまらぬ歌と書くが、そう感じさせぬほどの表現力をビリーは持っていると感じる。ここでもレスターの珍しいクラリネット・ソロが聴かれる。
Record2 B-8.「貴方は誰かのもの」
巨泉氏は、哀しい表現を試みるが一寸迫力がないと書いているが、僕にはそれが好ましく感じる。
コモドア・セッション
ジャズ評論家でありジャズ界の大物フィクサーとでもいった方がふさわしいと思われるジョン・ハモンド氏は、1938年3月18日ARC(The American record company)に、カウント・ベイシー楽団のピック・アップ・メンバー5人によるカンサス・シティ・ファイヴによる演奏のレコーディングを勧めた。その5人とは御大のベイシーはデッカの専属だったため除き、バック・クレイトン(Tp)、エディー・ダーハム(Tb&EG)、フレディー・グリーン(Gt)、ウォルター・ペイジ(B)、ジョー・ジョーンズ(Ds)であった。この演奏は素晴らしいものであったが、ARCはこれを発売しようとしなかった。この演奏については「カンサス・シティ・ファイヴ 1938年」を参照。そこでハモンド氏は友人であり、コモドア・ミュージック・ショップ(レコード店)の経営者であり、コモドア・レコードのプロデューサーでもあるミルト・ゲイブラー(Milt Gabler:1911〜2001 写真右)氏に相談し、この音源を買い取り、レコード化して発売することを勧めた。
ゲイブラー氏は、ベイシー楽団が「フェイマス・ドア」に出演したのを聴いており、レスター・ヤングのテナー・サックスとクラリネットを気に入り、何とかレスターをフューチャーしたレコードを自身でプロデュースしたいと望んでいた。そこでハモンド氏に、このメンバーにレスターを加えたレコーディングをセッティングしてくれるなら、「カンサス・シティ・ファイヴ」の録音を買い取り、レコード化し、発売しようという交換条件を出したのである。こうしてレスターを加えた「カンサス・シティ・シックス」のレコーディングが行われることになったのである。
<Date & Place> … 1938年9月27日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カンサス・シティ・シックス(The Kansas city six)
<Contents> … 「レスター・ヤング/カンサス・シティ・シックス(完全版)」(Commodore KIJJ 2064〜5)&"The Alternative Lester"(Tax m-8000)
| Record1 A-1. | ウェイ・ダウン・ヨンダー・イン・ニュー・オリンズ | Way down yonder in New Orleans |
| Record1 A-2. | ウェイ・ダウン・ヨンダー・イン・ニュー・オリンズ | Way down yonder in New Orleans |
| Record1 A-3. | カウントレス・ブルース | Countless blues |
| Record1 A-4. | カウントレス・ブルース | Countless blues |
| Record1 A-5. | ゼム・ゼア・アイズ | Them there eyes |
| Record1 A-6. | ゼム・ゼア・アイズ | Them there eyes |
| Record1 A-7. | アイ・ウォント・ア・リトル・ガール | I want a little girl |
| Record1 A-8. | アイ・ウォント・ア・リトル・ガール | I want a little girl |
| Record1 B-1. | ペイギン・ザ・デヴィル | Pagin’the devil |
| Record1 B-2. | ペイギン・ザ・デヴィル | Pagin’the devil |
左上の「レスター・ヤング/カンサス・シティ・シックス(完全版)」はマスター・テイクと別ヴァージョンの2種類が収録されているが、右の"The Alternative Lester"には別ヴァージョンだけが収録されている。
Record1 A-1,2.「ウェイ・ダウン・ヨンダー・イン・ニュー・オリンズ」
A-2が発売されたテイクである。テーマを吹くクレイトンとレスター(Clをプレイ)の絡みはタイトルを意識してかディキシーランド風である。ソロはクレイトン⇒レスター(ソロはテナー)⇒ダーハムである。
Record1 A-3,4.「カウントレス・ブルース」
曲はエディ・ダーハムの書き下ろし。「カウントレス」とはもちろん「カウント・ベイシー抜きで」という意味であろう。ここではダーハム⇒レスター⇒クレイトンとなる。レスターはソロでもClを吹いている。
Record1 A-5,6.「ゼム・ゼア・アイズ」
現在でも演奏されるスタンダード・ナンバー。何といってもフレディ・グリーンが歌っているのが珍しい。クレイトンがリードするテーマの後フレディのヴォーカル⇒レスター(Ts)⇒クレイトン⇒ダーハム(Gt)と繋ぎ、途中からレスターがClで絡む。
Record1 A-7,8.「アイ・ウォント・ア・リトル・ガール」
実にリリカルな演奏を聴かせてくれる。大和昭氏は「ジャズ史上に残る」とまで言い切っている。ソロはレスター(Ts)⇒クレイトン⇒ダーハム(Gt)。A-7がマスター・テイク。
Record1 B-1,2.「ペイギン・ザ・デヴィル」
レスター、クレイトン、ダーハム(Tb)3人のピアニシモ・アンサンブルがユニークなアンサンブルを奏でる中を、珍しくペイジ(B)がメロディックなプレイで前面に出る。エモーショナルなレスターのClソロからクレイトンのオープン・ソロ、エンディングは静かなリフを繰り返す。
<Date & Place> … 1938年10月31日、11月9日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)
<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第4集」(CBS SOPH 67〜68)
| Record1 A-1. | みんなの笑いものよ | Everybody's laughing | 10月31日 |
| Record1 A-2. | 又朝帰りよ | Here it is tomorrow again | 10月31日 |
| Record1 A-3. | 答えはキッスで | Say it with a kiss | 11月9日 |
| Record1 A-4. | 心は四月のよう | April in my heart | 11月9日 |
| Record1 A-5. | あなたを決して見捨てない | I'll never fail you | 11月9日 |
| Record1 A-6. | 人は言う | They say | 11月9日 |
| Record1 A-7. | 人は言う | They say | 11月9日 |
名義はテディ・ウィルソンで一連のブランズウィックへの吹込みである。大和明氏の解説に拠れば、このセッションから、サックス・セクションの強化が図られ、小編成から中編成への動きがみられ、全体的にビッグ・バンドの雰囲気が出始めているという。それは当時スイング・ジャズの黄金期であり、ビッグ・バンド・ジャズの全盛時代であったからであろうという。そしてこうした動きはリーダー、テディ・ウィルソンの希望であったのではないかという。それはこの半年後にウィルソンは、BGのバンドから独立し、自己のビッグ・バンドを率いることになるのであり、ビッグ・バンド演奏に既に心が向いていたと思われるからであるという。
このセッションでは、スイング時代を風靡したハリー・ジェイムスが加わり、当時の人気ぶりを裏付けるような、自信に満ちた華麗で明るいソロを取っている。またテナー・サックスはベイシー楽団から2人が参加しているがソロを取るのはいずれもレスターの方である。
Record1 A-1.「みんなの笑いものよ」
通常テディのセッションでは、ビリーのヴォーカルは1コーラスだけだが、この曲では、プレイヤーのソロをはさんで前後で歌うという例外的な構成が見られる。確かにアンサンブルはソフトで、如何にも当時のビッグ・バンド風である。ヴォーカルの後最初にソロを取るのは、テディで、続いてレスター、ハリーの短いソロが入り、少しだけビリーが歌って終わる。
Record1 A-2.「又朝帰りよ」
当時風のサックス・ソリのアンサンブルからハリーの短いソロが入り、ビリーのヴォーカルとなる。そしてテディはいつもの華麗なスタイルでスイングする。
Record1 A-3.「答えはキッスで」
先ずモートンがストレートに吹き、テディのピアノが入り、ビリーの歌となる。続くハリーのTpは明るくベリガン風のプレイだが、続くレスターのソロと比べると子供に感じてしまう。
Record1 A-4.「心は四月のよう」
まずベニー・カーターが華麗なプレイを披露する。ビリーの歌が入り、続くテディのソロが良い感じだ。そしてハリーのTpはここでもベリガンを思い出させる。続くテナーはレスターではなくエヴァンス。
Record1 A-5.「あなたを決して見捨てない」
TpとPのイントロから当時風のアンサンブルとなり、ビリーの歌に引き継ぐ。巨泉氏は珍しく甘さを出して歌っているという。続くTsはエヴァンスで、短いPソロが入り、ハリーのTpでエンディングを迎える。
Record1 A-6、7.「人は言う」
まずハリーがスイートでセクシーなソロを聴かせ、続くテディもリリカルなプレイを行う。そしてビリーも控えめな歌唱を行う。続くカーターのアルトがここでも華麗に吹き上げている。
この11月に、ビリーはアーティー・ショウの楽団を退団した。そしてこのテディのバンドの方は、これだけ優れたメンバーを集めながら、テディは他のメンバーに余りソロを取らせていない。そういえばテディ以外のメンバーのソロは短くなってきているような気がする。ここではサックスを中心としたアンサンブルをバックにテディのピアノを浮き上がらせている。こうなるとオールスター・メンバーを揃えたブランズウィック・セッションは、意義が薄れてきたといえよう。こうした傾向は40年代に大きな人気を博するエディ・ヘイウッドのバンドなどにも影響を与えているといえよう。
<Date&Place> … 1938年11月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
Vocal … ヘレン・ヒュームズ(Helen Humes) ⇒ In
以外は前録音(1938年6月6日)からの変更点
女性専属歌手だったビリー・ホリディが退団したため新たにヘレン・ヒュームズを雇うことになった。さすがに良い選択をしている。
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record3.A-1. | ダーク・ラプチュアー | Dark Rapture |
| record3.A-2. | ショーティー・ジョージ | Shorty George |
| record3.A-3. | ザ・ブルース・アイ・ライク・トゥ・ヒア | The blues I like to hear |
| record3.A-4. | ドゥ・ユー・ウォナ・ジャンプ・チルドレン | Do you wanna jump children |
| record3.A-5. | パナシェ・ストンプ | Panassie stomp |
record3.A-1.ダーク・ラプチュアー
数か月前に専属歌手として参加したばかりの女性シンガー、ヘレン・ヒュームズを始めてフューチャーした録音。大和氏は、「彼女のヴォーカルは当時チック・ウエッブの専属歌手として売り出していたエラ・フィッツジェラルドと偉大なる白人シンガー、ミルドレッド・ベイリーの影響を感じさせる」と書いている。ここではバンド全体が実に整然としたスイング感をもたらしており、アンサンブルも素晴らしい。この頃からベイシー・サウンドの洗練化が進み、編曲された演奏が次第に多くなる傾向にある。なお、レスターのソロが実にリラックスしたよい感じで歌っている。
record3.A-2.ショーティー・ジョージ
ハリー・エディソンとベイシーの共作で新鮮な感覚にあふれたミディアム・バウンス・ナンバー。タイトルの「ショーティー・ジョージ」とは、ダンスの一種の名称だという。前半のアンサンブルとアドリブ・ソロの交差、後半でのブラス・セクションとリード・セクションの交差や合奏などにジミー・マンディの編曲手腕がうかがえる。
record3.A-3.ザ・ブルース・アイ・ライク・トゥ・ヒア
こちらは古株ヴォーカリストのジミー・ラッシングが聴かせる。アール・ウォーレンがリードするサックス・セクションの滑らかなアンサンブルが美しい。いわばベイシー・サウンドのニューヨーク化がここに見られる。全編にわたりベイシーバンドの優秀なセクションによるアンサンブル・サウンドが彩りを加えている。
record3.A-4.ドゥ・ユー・ウォナ・ジャンプ・チルドレン
活気あるアンサンブル、躍動感みなぎるベイシーを先頭にしたリズム陣の動き、男性的なラッシングのシャウト、全てが聴き手のハートを燃え上がらせるだろうと解説の大和昭氏。それにしても演奏全体が実に洗練されてきている。
record3.A-5.パナシェ・ストンプ
ベイシーが当時渡米していたジャズ評論の先駆者の一人ユーグ・パナシェを歓迎してつくったリフ・チューン。ここでは再び活気あふれるカンサス・ジャズが満喫できる。ベイシーのオール・スター・ジャズメン総動員を思わせる迫力あるアドリブの応酬が楽しい。豪華で華麗なアンサンブルにもこのバンドの熱気が感じられる。
そしてこの後、カウント・ベイシーとその楽団は「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」の主力メンバーとして再びーネギー・ホール出演を果たすのである。
<Date&Place> … 1938年12月23日 ニューヨーク・カーネギー・ホールにて録音
<Peronnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
11月16日からの移動。
Trumpet … シャド・コリンズ ⇒ In
<Contents> … <legendary>&<Definitive>&<Original>
| CD1-1.&DefCD1-1. | スインギン・ザ・ブルース | Swingin' the blues | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD1-2.&DefCD1-2. | ワン・オクロック・ジャンプ | One O'clock jump | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD1-4.&DefCD1-3.&OriCD1-7. | ブルース・ウィズ・リップス | Blues with Lips | ホット・リップス・ペイジ・ウィズ・ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ | |
| CD1-5.&DefCD1-27. | アイ・ネヴァー・ニュー | I never knew | カンサス・シティ・ファイヴ | |
| CD1-6.&OriCD1-12. | その手はないよ | Don't be that way | カンサス・シティ・ファイヴ |
| CD1-8.&OriCD1-4. | ブルース・ウィズ・ヘレン | Blues with Helen | ヘレン・ヒューム・ウィズ・カンサス・シティ・ファイヴ |
そもそも「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」の音源は面倒くさい。どう面倒なのかは「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング 1938年」を参照。
<Contents>の略称は、
<legendary>="From Spirituals to Swing-the legendary 1938&1939 Carnegie hall concerts produced by John Hammond"(Vanguard -169/71-2)
<Definitive>="From Spirituals to Swing complete legendary 1938-1939 Carnegie hall concert"(Definitive records DRCD 11182)
<Original>=「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」(ヴァンガード・ジャズシリーズ キング・レコード LAX-3076-7)
「スインギン・ザ・ブルース」
<オリジナル・ヴァンガード盤>未収録。上記のように混乱の中始まった1曲目だが、全くその気配は感じられない。この年の2月にスタジオ録音を行ったジャンプ・ナンバー。Dsのカウントの後生きのいいビッグ・バンドサウンドが飛び出す。アンサンブルが見事で実にスインギー!これでツカミはOKという感じであろう。
「ワン・オクロック・ジャンプ」
1937年年間ヒットチャート第2位のベイシーの代名詞ともいえるヒット曲。<オリジナル・ヴァンガード盤>では途中から始まり、ラスト・コーラスのみ収録されている。これを油井氏は「録音盤の取り換えに手間取ったのだろう」としているが、何のことはいないベイシーのピアノのイントロからちゃんとあるではないか。でも演奏は大変短い。最も盛り上がりそうなナンバーなのに意外である。
「ブルース・ウィズ・リップス」
<Definitive complete>ではすぐに演奏に入るが、<ヴァンガード盤>では、ジョン・ハモンド氏による紹介が入る。曰く「私が最初にベイシー・バンドを聴いたのは、1936年カンサス・シティのリノ・クラブでした。たった9人の編成で、トランペットのホット・リップス・ペイジがフューチャーされていました。ペイジは世界最高のトランペット奏者の一人ですが、今はベイシーのバンドにはいません。」とここで再会の演奏であることを聴衆に告げます。油井氏は内容からジョン・ハモンド氏本人のコメントと判断したのであろう。<Definitive complete>でもこういう部分は残して欲しかった。
勿論ペイジのTpフューチャーされる。長尺のプレイで彼のブルース・プレイが堪能できる。Tsソロはエヴァンズ。
「アイ・ネヴァー・ニュー」
この曲と次の曲はベイシーバンドのピック・アップ5人による「カンサス・シティ・ファイヴ」による演奏。「カンサス・シティ・ファイヴ」のメンバーは、バック・クレイトン(Tp)、レスター・ヤング(ts)、カウント・ベイシー(p)、ウォルター・ペイジ(B)、ジョー・ジョーンズ(Ds)の5人。しかしレコード上ではコモドア・レコードにこの年3月に吹き込みを行った時に使われており、その時のメンバーはバック・クレイトン(Tp)、エディ・ダーハム(Tb&Gt)、フレディ・グリーン(Gt)、ウォルター・ペイジ(B)、ジョー・ジョーンズ(Ds)の5人だった。ベイシー楽団のメンバー5人が参加した場合は「カンサス・シティ・ファイヴ」ということで、特別に名前に意味はないのであろう。
アップ・テンポのナンバーで、最初の合奏はディキシー風だ。ソロはベイシー⇒レスター(Cl)⇒クレイトン。レスターがディキシー風クラリネットを吹くのが面白い。
「その手はないよ」
ベニー・グッドマンの楽団が1月のカーネギー・ホールでのコンサートで演奏して大当たりを取り、改めてスタジオ盤を録音しヒットしていたナンバー。一聴すると「その手はないよ」には聴こえないくらい形を変えている。ソロはレスター、クレイトンだが2度目に出るレスターのソロは彼屈指のパフォーマンスであるという。
「ブルース・ウィズ・ヘレン」
「カンサス・シティ・ファイヴ」にベイシー楽団の専属歌手ヘレン・ヒュームズ(Helen Humes)が加わっている。ヒュームズはビリー・ホリデイが辞めた後のベイシー楽団に雇われたシンガー。ゆったりとしたテンポで素晴らしい歌唱を聴かせてくれるが中間に入るレスターのクラリネット・ソロも素晴らしい。
この日のフィナーレはやはり人気のカウント・ベイシー楽団のノリノリで、ということなのだろう。「ジャズって、楽しいでしょ!」というところだろう。
Peronnel … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
「スティーリン・ブルース」のみジミー・ラッシング(Jimmy Rushing)が加わる。
<Contents> … <legendary>&<Definitive>
| CD2-7.&CD1-22. | エヴリー・タブ | Every tub | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD2-8.&CD1-23. | スティーリン・ブルース | Stealin' blues | ジミー・ラッシング・ウィズ・ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ | |
| CD2-9.&CD1-24. | アフター・ユーヴ・ゴーン | Aftre you've gone | カンサス・シティ・シックス | |
全て<オリジナル・ヴァンガード盤>未収録。
「エヴリー・タブ」
この年の2月にスタジオ録音を行ったナンバーなので、新曲と言えるかも。アップ・テンポのスインギーなナンバーで、ソロはレスター⇒ベイシー⇒エディソン⇒エヴァンズ。アンサンブルも見事。
「スティーリン・ブルース」
ファッツ・ウォラー作のミディアム・テンポのブルース・ナンバー。専属歌手のラッシングの迫力あるブルース歌唱がすごい。
「アフター・ユーヴ・ゴーン」
オーケスタらからのピック・アップ・メンバーによる演奏。最初のコーナーでは<ファイヴ>と5人だったが、ここではレナード・ウエア(Leonard Ware)というギター奏者が加わり6人となる。このウエアというギタリストはエレキ・ギターを弾きクレイトンの次にソロを取っている。ただこの人物の登場が登場は唐突感が否めない。どういう事情でここに加わったのだろうか?
後を継ぐレスターのソロがスゴイ。終わり近くに各自2小節ずつの短いソロがあり、エンディングを演出している。
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