スタン・ゲッツ 1947年

Stan Getz 1947

話は1945年にさかのぼる。スタン・ケントン楽団にジーン・ローランドというTp奏者がいた。スタン・ゲッツも同じころケントン楽団にいた。1946年ゲッツがベニー・グッドマンのバンドをクビになった後、ゲッツはバディ・モロウやランディ・ブルックスなどのバンドで糊口をしのいでいた。そしてジーン・ローランドが1946年ニューヨークに出て、テナー・サックス四重奏を含むコンボを作った時にゲッツも参加した。のである。四重奏を担当するテナー・マンはアル・コーン、ジョー・メグロ、ルイス・オット、そしてゲッツであった。しかしこの時は世間の注目を惹くことはなかった。
ゲッツはニューヨークで7月31日初のリーダー作を吹き込んだ後、秋になるとゲッツはホームシックになり、陽光溢れるロサンゼルスと家庭が恋しくなってきた。彼女のべヴァリーもクロウド・ソーンヒルとの契約が終了し、ゲッツもその時入っていたハービー・フィールズのバンドにも飽きてきていた。二人は南カリフォルニアへ帰ることにする。そしてロスについて数週間後の11月7日にロサンゼルスで結婚式を挙げるのである。二人とも19歳だった。こうしてロスアンゼルスに帰ったものの、麻薬を常用する生活は金がかかり、しかも安定した仕事にはなかなかありつけなかった。ゲッツとべヴァリーは生活費を稼ぐために、南カリフォルニア中でフリーランスを仕事をして回った。1947年の初めには、ゲッツはスタジオが必要とする才能あるミュージシャンの一人となっていた。
5月6月にはベニー・グッドマンのバンドに入って、七つのラジオ放送と一つの録音セッションに参加した。BGは未だゲッツの才能に惚れ込んでいた。これからは間違いなく定められた時間にやって来て、直ぐに演奏が始められるようにすると約束すると再雇用されたのだ。なおこの時ズート・シムズ、ジミー・ロウルズ、ドン・ラモンドも録音に参加していた。ゲッツとロウルズは5月初めに行われたウディ・ハーマンのヴォーカルをフューチャーしたレコーディングにも参加した。6月には、ジーン・ノーマンが主宰した「ジャスト・ジャズ・コンサート」にも参加した。他にもヴィド・ムッソや7月にはブッチ・ストーンのバンドに加わり、<レッド・フェザー>という店に出演した。このバンドには、Tpそして作・編曲を手掛けるショーティ・ロジャースやハービー・スチュアードがいて、批評家たちには好評だったが、家計の足しにはそれほどならなかった。そこでゲッツはハービー・スチュアードと親しくなる。二人はストーンの楽団を辞め、ジーン・ローランドが結成した2度目の4本テナーのバンドに加わった。

ジーン・ローランドは、4人のテナー・サックス奏者が近接したハーモニーで合奏するサウンドに魅せられており、このアイディアを発展させる2度目のバンドを、1947年ロスアンゼルスで立ち上げる。この時の4本テナーが、ゲッツ、スチュアード、ズート・シムス、ジミー・ジュフリーの4人であった。この新生ローランドのバンドは、スパニッシュ・ボールルームに出演し、ラテンもので客席を沸かせ、4本テナーによる種々の実験を重ねていた。この4人の共通項は、4人ともレスター・ヤングに魅せられていたことである。
この新しいバンドを最初に魅せられたのは、ウディ・ハーマン楽団のアレンジャー、ラルフ・バーンズだった。そして新しいバンドとサウンドを考えていたウディ・ハーマンに紹介するのである。ハーマンは早速聴きにやって来て魅せられ、このユニークなサックス・カルテットをそっくりそのまま新しいバンドで使おうと引き抜くのである。ハーマンはゲッツ、スチュアード、ズート・シムスを雇ったが、ジュフリーは雇わず、バリトン・サックスのサージ・チャロフを入れた。そしてジュフリーには、このリード・セクションをフューチャーする新しい曲を書くことを依頼する。こうしてできたのがウディ・ハーマンのセカンド・ハードの代名詞「フォア・ブラーズ」なのである。そしてゲッツはこの後しばらく「フォア・ブラーズ」の一員として、人気バンド、ウディ・ハーマンのオーケストラでプレイを続けるのである。

<Date&Place> … 1947年10月19日、12月22,24,27,31日 ロスアンゼルスにて録音

<Personnel> … ウッディ・ハーマン楽団(Woody Herman and his orchestra)

Band leader , Alto sax , Clarinet & Vocalウッディ・ハーマンWoody Herman
Trumpetバーニー・グロウBernie Glowアーニー・ロイヤルErnie Royalアーヴ・マルコヴィッツIrv Markowitzショーティ・ロジャースShorty Rogersスタン・フィッシェルソンStan Fishelson
Tromboneアール・スォープEarl Swopeオリィ・ウィルソンOllie Wilson
Bass Tromboneボブ・スィフトBob Swift
Alto saxサム・マロヴィッツSam Marowitzハービー・スチュアードHerbie Steward
Tenor saxスタン・ゲッツStan Getzズート・シムスZoot Sims
Baritone saxサージ・チャロフSerge Chaloff
Pianoフレッド・オーチスFred Otis
Guitarジーン・サージェントGene Sargent
Bassウォルト・ヨンダーWalt Yoder
Drumsドン・ラモンドDon Lamond
Vocalマリー・アン・マッコールMary Ann McCall
Arrangementラルフ・バーンズRalph Burns

1946年12月10日からの移動。
Trumpet … カッピー・ルイス、コンラッド・ゴゾー、ボブ・ペック、チャック・ピーターシュ、アル・ポーシノ ⇒ バーニー・グロウ、アーニー・ロイヤル、マーキー・マルコヴィッツ、ショーティ・ロジャース、スタン・フィッシェルソン
Trombone … ラルフ・ヘフナー、ビル・ハリス、エド・キーファー ⇒ アール・スォープ、オリィ・ウィルソン
Bass Trombone … ボブ・スィフト ⇒ In
Alto sax … ジョン・ラポータ ⇒ ハービー・スチュアード
Tenor sax … フリップ・フィリップス、ミッキー・フォーラス ⇒ スタン・ゲッツ、ズート・シムス
Baritone sax … サム・ルビノヴィッチ ⇒ サージ・チャロフ
Piano … ジミー・ロウルズ ⇒ フレッド・オーチス
Guitar … チャック・ウエイン ⇒ ジーン・サージェント
Bass … ジョー・モンドラゴン ⇒ ウォルト・ヨンダー
ほぼ総入れ替えである。これでバンドはどうなったかと言えば、ファースト・ハードでは、史上類稀なる陽気でエキサイティングなスイングを持っていたのに比べて、より地味で内向的な傾向が強い。一口に言えば、ファースト・ハードは「バップ・バンド」で、セカンド・ハードは「クール・バンド」と言える。では実際に演奏を聴いていこう。

<Contents> … 「ウディ・ハーマン/ザ・サンダリング・ハーズ」(CBS SL-1191〜3-C)&"Woody Herman/The thundering herds"(Columbia C3L-25)

record3 B面2.アイ・トールド・ヤー・アイ・ラヴ・ヤーI told ya I love yas , now get out10月19日
record3 B面3.キーン・アンド・ピーチーKeen and peachy12月22日
record3 B面7.アイヴ・ゴット・ニューズ・フォー・ユーI've gotnews for you12月22日
record3 B面4.レイジー・ララバイLazy lallaby12月24日
record3 B面5.ザ・グーフ・アンド・アイThe goof and I12月24日
record3 B面1.サマー・シークエンス 第4部Summer sequence part412月27日
record3 B面8.フォア・ブラザースFour brothers12月27日
record3 B面6.P.S.アイ・ラヴ・ユーP.S. I love you12月31日
「アイ・トールド・ヤー・アイ・ラヴ・ヤー」
スタン・ケントンもこの年10月に吹き込んでいるナンバー。ケントンはこの時ラテン色に染まっている時だった。ソロはボブ・クーパー(Ts)が取っていた。ハーマン版は、スインギーなアンサンブルで始まり、直ぐにハーマンのヴォーカルとなる。ヴォーカルの後、短いソロがゲッツ、スチュアード(As)、シムス、ゲッツ、スチュアード(As)、チャロフ(Bs)、ロイヤルとアンサンブルを挟みながら、入り乱れて登場する。
「キーン・アンド・ピーチー」
ショーティ・ロジャースとラルフ・バーンズが"Fine and dandy"のコード進行に基づいて書いた曲という。この辺りは実にバップっぽい。演奏もアップ・テンポでバップぽいインスト・ナンバー。サックスのアンサンブルが凄まじい。ソロはゲッツ、シムス、ショーティー、スウォープ、チャロフ、ロイヤルと短いソロが入り乱れる。

「アイヴ・ゴット・ニューズ・フォー・ユー」
ショーティ・ロジャースのアイドル、チャーリー・パーカー作曲したブルース・ナンバーを、ロジャースがアレンジしたもの。ハーマンのヴォーカルがフューチャーされる。中間のサックス・アンサンブルは、当時バンドメンたちがこぞって尊敬していたチャーリー・パーカーの「ダーク・シャドウズ」のコーラスをそのまま吹いたという興味ある演奏だという。ソロはロジャース、ラモンド、スウォープ、ロイヤル。
「レイジー・ララバイ」
ハーマン自身のオリジナル。スロウなナンバーで、タイトル通りレイジーな雰囲気があふれている。ハーマンのヴォーカルがフューチャーされるが、これもレイジーである。間奏もアンサンブルである。
「ザ・グーフ・アンド・アイ」
アル・コーンが作・編曲したインスト・ナンバー。アンサンブルからソロは、ラモンド、チャロフ、アンサンブルを挟んでスウォープ、ハーマン。実にスインギーでダイナミックな演奏が楽しめる。
「サマー・シークエンス 第4部」
元は前年1946年三部作として吹き込まれた「サマー・シークエンス」の続編をコロンビアが望んだのに対して、ラルフ・バーンズが第4部として作ったもの。ピアノのイントロからギターが入り、アンサンブルが入り音が厚くなってくる。ソロというかテーマをハーマンがアルトで吹き、有名なゲッツのソロとなる。実にリリカルで当時こういうテナーを吹く人はいなかったと思う。このソロでゲッツは世間の耳目を集めることとなった。
「フォア・ブラザース」
「セカンド・ハード」は別名「フォア・ブラザーズ・バンド」と呼ばれるように、まさにこの曲は以降ハーマン・バンドの代名詞となる。超有名なこの曲だが、収録されているレコードは僕の知る限りこの「ウディ・ハーマン/ザ・サンダリング・ハーズ」という3枚組だけである。そんなこの曲は、3本のテナー・サックスと1本のバリトン・サックスのヴォイシングを中心にそれぞれのソロを並べたもので、セカンド・ハードのデビュー前、リハーサルの時から練習を行い、セカンド・ハードの基本的なサウンドになった。作はジミー・ジュフリーで、サックス奏者のジュフリーがなぜ加わっていない。それにしてサックス・アンサンブルが素晴らしい。とても軽快でリリカルな音色でテーマが吹奏され、ソロは、シムス、チャロフ、スチュアード、ゲッツと素晴らしいソロが続き、ハーマン(As)、ラモンドと味変し、ゲッツ、シムス、スチュアード、チャロフの順で2小節ブレークを吹き、アンサンブルで締め括る。
「P.S.アイ・ラヴ・ユー」
ジョニー・マーサー作の当時の流行歌をバーンズがアレンジしたもの。マッコールのヴォーカルがフューチャーされる。中間のClソロはハーマン。

ここにおいてスタン・ゲッツは、レスター・ヤングやチャーリー・パーカー、デクスター・ゴードンのような音を出していない。彼は自分の音を出している。弱冠20歳にして、彼は一人立ちしたミュージシャンとなったのである。

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