ルイ・アームストロング 1947年
Louis Armstrong 1947
30年代から40年代半ばにかけてルイ・アームストロングは、ビッグ・バンドを率いて活動することがほとんどであった。彼はエンターテイナーとして、またポップ・シンガーとして多大な人気を博していたのである。しかし40年代も半ばに入り、ビッグ・バンドを中心としたスイング・ジャズもようやくその幕を閉じようとしており、ルイのビッグ・バンドも識者たちから芳しくない評価を受けるようになっていた。
そもそもルイの本来の実力は、小編成のコンボの方がより活きると考える評論家たちが多かったのである。その代表的な存在であるレナード・フェザー氏は、1945年1月第2回エスクワイア・ジャズ・コンサートで、ルイにホット・シックスというニューオリンズ・ジャズ・グループを組ませて演奏させるなど、ルイにコンボによる演奏活動を行うよう促していった。こうしてルイの気持ちは、コンボへと傾いていったのだという。しかし彼のマネージャーのジョー・グレイザーはそう考えていなかった。当時のプロモーターの一人、アーネスト・アンダーソンもルイのコンボ推進派の一人で、彼はオールスター・コンボによる一大コンサートを企画し、グレイザーに掛け合い、説得して、ルイの出演を了解させるのである。こうして実現したのがこのタウン・ホールでのコンサートなのだという。
しかしルイには、フィラデルフィアで仕事が入っていたため、アンダーソンは音楽監督に、ルイと親しくよくルイを理解しているボビー・ハケットを起用し、人選などを一任したのであった。ハケットは、パーソネルに見られるミュージシャをお選び、リハーサルを行った。ルイは結局リハーサルの時間も取れぬまま、当日ソロ・ルーティンに目を通しただけでステージに立ったのだという。それでもこの日のコンサートの模様を記録した本LPは傑作の誉れ高い作品に仕上がった。
<Date&Place> … 1947年5月17日 ニューヨーク・タウン・ホールにて実況録音
<Personnel> … ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オールスターズ(Louis Armstrong and his All-stars)
<Contents> … 「ルイ・アームストロング/コンプリート・タウン・ホール・コンサート」(RCA RVJ-6007)
| A面1. | バーベキュー | Struttin' with some barbecue |
| A面2. | スイートハーツ・オン・パレイド | Sweethearts on parade |
| A面3. | セントルイス・ブルース | St.Louis blues |
| A面4. | 明るい表通りで | On the sunny side of the street |
| A面5. | 捧ぐるは愛のみ | I can't give you anything but love |
| A面6. | マスクラット・ランブル | Muscrat ramble |
| A面7. | ロイヤル・ガーデン・ブルース | Royal garden blues |
| A面8. | 懐かしのニューオリンズ | Do you know what it means to Miss New Orleans ? |
| B面1. | 浮気はやめた | Ain't misbehavin' |
| B面2. | ロッキン・チェア | Rockin' chair |
| B面3. | バック・オ・タウン・ブルース | Back O' town blues |
| B面4. | ぺニーズ・フロム・ヘヴン | Pennies from heaven |
| B面5. | セイヴ・イット・プリティ・ママ | Save it , pretty Mama |
| B面6. | セント・ジェイムズ病院 | St. James infirmary |
「バーベキュー」
ルイは1927年12月にホット・ファイヴでレコーディングして以来、スタンダードとなった曲。アンサンブルからティーガーデン、ハッコー、ルイの生き生きしたソロが展開される。カトレットのドラミングも大いに盛り上げている。
「スイートハーツ・オン・パレイド」
ルイは、28年リリー・デルク・クリスチャンの歌伴、自身では40年にビッグ・バンドで吹き込んでいるという。落ち着いたテンポでルイがリードしていくが、サビからハケットが引き継ぐ。ルイの味のあるヴォーカルからティーガーデンのソロを挟んで、ルイが再びアンサンブルをリードして大いに盛り上げる。
「セントルイス・ブルース」
W.C.ハンディの不朽の名作。先ずルイがソロを取り、続いてティーガーデン、ハッコー、再びルイが力強いプレイで大いに盛り上げて終わる。
「明るい表通りで」
ファッツ・ウォーラー作のスタンダード・ナンバー。割と速いテンポでアンサンブルからルイのヴォーカルとなる。ソロはハッコー、ティーガーデンと続き再びルイがリードを取る。各メンバーを鼓舞するカトレットのドラミングも見事。
「捧ぐるは愛のみ」
ルイは29年3月に吹き込んでいる。1コーラス目の最初の24小節はルイ、続く8小節はハケットが吹いているという。ヴォーカルの後キャリーのPソロ、そしてルイが力強く吹いてエンディングとなる。
「マスクラット・ランブル」
ルイの盟友キッド・オリィの作。26年ホット・ファイヴで吹き込んでいる。力強い集団即興からキャリー、ルイのソロがフューチャーされる。
「ロイヤル・ガーデン・ブルース」
古典的なトラディショナル・ナンバー。ルイ、ハッコー、ティーガーデンとソロが続き、最後は再びルイが登場し、力強くアンサンブルをリードして終わる。
「懐かしのニューオリンズ」
ビリー・ホリディと共演した前年の映画「ニューオリンズ」の主題歌。故郷ニューオリンズへの思いを込めたルイのヴォーカル、Tpプレイが心を打つ。
「浮気はやめた」
これもファッツ・ウォーラーの名作。ルイは29年7月に一度吹き込んでいる。ルイのヴォーカルの後ハッコーの熱演、ティーガーデン、ルイとソロが続く。全篇に渡って盛り上げるカトレットのドラミングが素晴らしい。
「ロッキン・チェア」
ホーギー・カーマイケル作のスタンダード・ナンバー。ピアノのイントロからハケットのソフトなコルネットにリードされ、ティーガーデンの寛いだヴォーカルにルイが絡む。ヴォーカルの後ハケットのリードからルイが輝かしくエンディングに導いていく。
「バック・オ・タウン・ブルース」
ニューオリンズへの郷愁を歌い上げたブルース。アンサンブルをルイがリードし、ルイのヴォーカルにはハケットがオブリガードを付ける。ソロはティーガーデン。最後にルイがアンサンブルをリードして終わる。
「ぺニーズ・フロム・ヘヴン」
ルイも出演した映画「黄金の雨」の主題歌。ルイのヴォーカルをハケットとティーガーデンがオブリガードを付ける。ヴォーカル後のティーガーデンのソロが滋味に富んで素晴らしい。
「セイヴ・イット・プリティ・ママ」
ドン・レッドマン作という。キャリーの美しいイントロからルイも落ち着いたソロを聴かせ、さらにキャリーのソロからルイのヴォーカルとなる。続くティーガーデンのソロから再びルイがソロを取り、力強く盛り上げる。
「セント・ジェイムズ病院」
古いトラディショナルで、ルイは28年11月に一度吹き込んでいる。ここではティーガーデンが至芸を聴かせる。ヴォーカルもティーガーデンで、ルイとは違った味のあるブルース・フィーリングを持っている。短いPの後のTbソロはベルを外してコップを使い独特の哀愁を表現しているという。
1948年に公開されたMGM映画"A song is born"のために集められたメンバーによる録音が行われた。ものすごく豪華なメンバーである。このパーソネル・メンバーはそのまま映画にも出演した。しかし映画のタイトルが"A song is born"なのに、曲名が"A song was born"と過去形になっているんだろう?
映画のストーリーは、フォーク・ミュージックの研究家である教授(ダニー・ケイ)が、7人の学者と共に総合的な音楽百科事典を執筆し録音していた。そして学者達は、10年近くラジオも聴かず世の中とは断絶された生活を送っていた。たまたま教授たちの研究室の、2人の窓拭きが教授たちに質問をしたことをきっかけに、教授たちはスウィング、ジャイブ、ブルース、ブギウギ、ビ・バップなど、ポピュラー音楽にはさまざまなスタイルがあることに気づかされる。そこで教授は早速様々なタイプのジャズを求めて、夜の街に繰り出し、ナイトクラブを探索して回る。そこで教授はメル・パウエル、トミー・ドーシー、ゴールデン・ゲイト・カルテット、チャーリー・バーネット、ライオネル・ハンプトン、ルイ・アームストロング、ベニー・カーターといったミュージシャンに出会う。そしてそこで出会ったナイト・クラブの歌手(ヴァージニア・メイヨ)に恋心を持つに至る。そして色々紆余曲折を学者仲間やジャズ・ミュージシャン達の協力で乗り越えて結ばれるというお話です。
その映画の挿入歌が「ア・ソング・ウォズ・ボーン」です。右はその映画内での演奏シーン。左からベニー・グッドマン、ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトン、チャーリー・バーネット、トミー・ドーシーが映っています。
<Date&Place> … 1947年8月9日 多分ロスアンゼルスにて録音
<Personnel> … ジャイアンツ・オブ・ジャズ(Giants of Jazz)
<Contents> … 「キャピトル・コレクターズ・アイテム」(ECJ-50077)
B面1.「ア・ソング・ウォズ・ボーン」
レコードの解説によると、映画のサウンド・トラックとは別にキャピトルのスタジオにおいて録音されたという。癌研究基金への寄付を目的として製作されたSPアルバムに組み込まれて発売されたため、RCAとの契約下にあったサッチモやトミー・ドーシーの参加が可能になったという。
曲はどことなくドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」第2楽章(家路)に似ているが細かいことは気にせずに楽しもう。ゴールデン・ゲイト・カルテットのアカペラ・コーラスで始まり、アンサンブルが入り、ジェリ・サリヴァン、続いてルイのヴォーカル、ドーシーのTbソロ、ルイのTpソロ、バーネットのTsソロ、グッドマンのClソロからアンサンブルを挟んでパウエルのPの後2小節のソロ交換があって終わる。
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