ルー・ワターズ 1942年

Lu Watters 1942

左からワターズ、ダート、マーフィー、スコビー

1940年代に起こったジャズ・ムーヴメントと言って多くの方が思い起こすのが、ビ・バップ・ムーヴメントではないだろうか?ところがもう一つ実は大きなムーヴメントが起こっていたのである。それは西海岸から巻き起こった「ニュー・オリンズ・ジャズ・リヴァヴァル」ムーヴメントである。
確かに「ビ・バップ」ムーヴメントは後に、クールやモダン・ジャズに繋がっていく未来に向けてのムーヴメントだったが、「ニュー・オリンズ・ジャズ・リヴァヴァル」ムーヴメントは、どちらかというと古き良きものを見直そう的な過去に向いたムーヴメントであったため、その後のジャズ界における影響力には差があるような気がする。しかしこの時点で「過去を見直そう」という動きがあったおかげで、取り返しがつかなくなる前に、バンク・ジョンソンやジョージ・ルイスといったジャズ・マンを発掘することに繋がった重要なムーヴメントであったと思う。最近このムーヴメントのことが忘れ去られる傾向があるように思うが、彼らの功績をしっかりと記録に留めることは重要なことだと思う。
ただこのムーヴメントに関する資料は非常に少ないことは困ったことだ。正直ワターズ達のニューオリンズ・ジャズへの傾倒⇒ビル・ラッセル等へ波及⇒バンク・ジョンソン達の発掘と繋がったのか、ワターズのニューオリンズ・ジャズへの傾倒とビル・ラッセルらとは無関係に同時進行的に進んだのかは、現時点の僕には定かではない。
因みに「ヤーバ・ブエナ(Yerba Buena)」とは、サン・フランシスコの最古の名前だそうで、「良い土地」ぐらいの意味だそうです。
ということで今回は、ルー・ワターズ率いるヤーバ・ブエナ・ジャズ・バンドのレコードを聴いていこう。ワターズは1942年に大戦のため海軍に応召されたと言うし、彼らの次の録音が1946年ということを考えると応召前ギリギリの録音だったと思われる。尚音源は、"Lu Watters' Yerba Buena jazz band/1942series"(Good time jazz L-12007)というLP1枚にまとめられている。

「Lu Watters’ Yerba Buena jazz band/1942series」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1942年3月22日 カリフォルニア州サンフランシスコにて録音

<Personnel> … ルー・ワターズ・ヤーバ・ブエナ・ジャズ・バンド(Lu Watters' Yerba Buena Jazz Band)

Pianoウォリー・ローズWally Rose
Banjoクランシー・ヘイズClancy Hayesラス・ベネットRuss Bennett
Drumsビル・ダートBill Dart

<Contents>

A面4.ホット・ハウス・ラグHot house rag
B面5.テンプテイション・ラグTemptation rag

A面4.「ホット・ハウス・ラグ」とB面5.「テンプテイション・ラグ」の2曲は、ラグタイム・ピアノの名手ウォリ―・ローズの妙技を聴かせる2曲で、ローズにバンジョーの2人、そしてドラムのダートによる演奏である。「ホット・ハウス・ラグ」はポール・プラット(Paul Pratt)という人の作。「テンプテイション・ラグ」は、ヘンリー・ロッジ(Henry Lodge)の作。僕はこのロッジという人を全く知らないのだが、解説によれば素晴らしいラグの名曲をたくさん作っているらしい。その中でもこの曲が最も有名だそうだ。
どちらもそれぞれの面の真ん中ぐらいに置かれており、ちょっとした気分転換的な役割を担っている。バンジョー2人の伴奏というのも珍しいが、バックが出過ぎずうまくアクセントをつけている。僕は、ピアノ・ソロ以外のラグタイム演奏を初めて聴いたような気がする。

「Lu Watters’ Yerba Buena jazz band/1942series」A面ラベル

<Date & Place> … 1942年3月29日 カリフォルニア州サンフランシスコにて録音

<Personnel> … ルー・ワターズ・ヤーバ・ブエナ・ジャズ・バンド(Lu Watters' Yerba Buena Jazz Band)

Band leader & Cornetルー・ワターズLu Watters
Cornetボブ・スコビーBob Scobey
Tromboneターク・マーフィーTurk Murphy
Clarinetエリス・ホーンEllis Horne
Pianoウォリー・ローズWally Rose
Banjoクランシー・ヘイズClancy Hayesラス・ベネットRuss Bennett
Tubaスクワイア―・ガーズバックSquire Girsback
Drumsビル・ダートBill Dart

<Contents>

A面1.ハイ・ソサイエティHigh society
A面2.ミレンバーグ・ジョイズMilenburg joys
A面3.ダディ・ドゥDaddy do
A面5.マスクラット・ランブルMuskrat ramble
A面6.ロンドン・カフェ・ブルースLondon Cafe blues
A面7.タイガー・ラグTiger rag
B面1.フィジティ・フィートFidgety feet
B面2.カム・バック・スイート・パパCome back sweet Papa
B面3.サンセット・カフェ・ストンプSunset cafe stomp
B面4.テリブル・ブルースTerrible blues
B面6.リヴァーサイド・ブルースRiverside blues
B面7.ケイクウォーキン・ベイビーズ・フロム・ホームCakewalkin’ babies from home
「Lu Watters’ Yerba Buena jazz band/1942series」B面ラベル
「ハイ・ソサイエティ」
よくディキシー・バンドが演奏するスタンダード的なナンバー。解説(解説を書いているのはTbのターク・マーフィーらしい)によればミリタリー・バンド・ミュージックで元はベルギーの行進曲なのだという。
「ミレンバーグ・ジョイズ」
この曲もディキシー・バンドが良く演奏するジェリー・ロール・モートン作のスタンダード・ナンバー。レコードの表記は「ミルネバーグ・ジョイズ」(Milneburg joys)となっているが、これは「ミレンバーグ・ジョイズ」(Milenberg Joys)の誤り。
「ダディ・ドゥ」
上記2曲に比べると少しばかりテンポを落としている。ワターズのフェバリット・チューンだという。ソロはホーン(Cl)とローズ(P)が取っている。
「マスクラット・ランブル」
キッド・オリー作のこれもスタンダード・ナンバー。合奏が実に楽しげな雰囲気を醸し出している。Tbのマーフィーが活躍している。
「ロンドン・カフェ・ブルース」
ジェリー・ロール・モートンの作。イントロはローズのP。合奏の後ホーンのClソロがフューチャーされる。
「タイガー・ラグ」
O.D.J.B.のニック・ラロッカの作ということになっている、ビックス・バイダーベックも愛奏したというディキシーの超有名、人気ナンバー。ここでもホーンのClソロがフューチャーされる。
「フィジティ・フィート」
これもO.D.J.B.のナンバー。ブレークの多いナンバーである。ブレークで出るCorはワターズとスコビーで分けて吹いているようだ。ここでもソロはホーン(Cl)、その後のCorはワターズという。
「カム・バック・スイート・パパ」
ミディアム・テンポの寛いだ感じの曲。ソロはホーン(Cl)そして合奏の後マーフィー(Tb)。
「サンセット・カフェ・ストンプ」
浮き立つような楽し気なナンバー。まずソロを取るのはホーン(Cl)、合奏の後ワターズ(Cor)そしてマーフィー(Tb)と続く。
「テリブル・ブルース」
クラレンス・ウィリアムスの作だという。ソロを取るのはワターズ(Cor)。
「リヴァーサイド・ブルース」
クロスビー・バンドのディキシー・シャッフルと書いてある。クロスビー・バンドってボブ・クロスビーのボブ・キャッツかな?ソロはローズ(P)とCorソロはワターズ。
「ケイクウォーキン・ベイビーズ・フロム・ホーム」
クラレンス・ウィリアムスの作。マーフィーはとても楽しく演奏できたと書いている。ソロはホーン(Cl)。
ケイクウォーク(Cakewalk)は、辞書で引くと「おかしな歩き方」となっているが、歴史的には黒人がご褒美などでケーキ(Cake)をもらう時の歩き方を白人が面白おかしく真似をした。その白人を逆に黒人たちが誇張して面白おかしく真似をしてみせたものと言われる。

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